「償い」矢口敦子。
主人公の日高は、埼玉の光市(架空;おそらく和光市がモデル)のホームレスである。彼は、もともと脳外科の医師だった。
しかし、仕事に没頭するあまり、息子の容態を見て欲しいという妻を放置し、結果として息子を死なせてしまい、さらにそのことで妻を責めて妻の自殺を招いてしまう。
彼が執刀した患者が、手術に使用した硬膜がBSEに感染していたこともあって、すべてに絶望した日高はホームレスになったのである。
さて、光市で日高は、若い頃に偶然助けた子供が成長して少年となっているのに再会するが、ときを同じくして弱者を狙った連続殺人事件が起こる。
いったん犯人と疑われた日高だが、疑いは晴れ、その担当刑事から頼まれて事件の犯人捜しを手伝うことになる。
しかし、仕事に没頭するあまり、息子の容態を見て欲しいという妻を放置し、結果として息子を死なせてしまい、さらにそのことで妻を責めて妻の自殺を招いてしまう。
彼が執刀した患者が、手術に使用した硬膜がBSEに感染していたこともあって、すべてに絶望した日高はホームレスになったのである。
さて、光市で日高は、若い頃に偶然助けた子供が成長して少年となっているのに再会するが、ときを同じくして弱者を狙った連続殺人事件が起こる。
いったん犯人と疑われた日高だが、疑いは晴れ、その担当刑事から頼まれて事件の犯人捜しを手伝うことになる。
本書は、ミステリのいわゆる「謎解き」を楽しむ本じゃない。半分読まないうちに、もう犯人は名指しされているようなものだから。
だから、ミステリ類型でいえば「ホワイダニット」すなわち「彼が犯罪を犯した動機」がメインテーマである。
だけど、そのドラマがよく分からないのである。
だから、ミステリ類型でいえば「ホワイダニット」すなわち「彼が犯罪を犯した動機」がメインテーマである。
だけど、そのドラマがよく分からないのである。
他人の心の声の嘆きが聞こえる人物が、その悲しみに対して「解放としての死」をもたらす、という着想自体が、ちょいと陳腐なんだろうと思う。それだと、殺人現場の悲劇とあまりにミスマッチだ。
だから、そういう説明を説得力をもって描写するためには、それなりの背景が必要である。その背景が、子供の頃の大病では、ちょっと不足なのであろう。
誰だって、子供の頃に死にかけた程度のことは、まあ1回や2回はあるものじゃないか。それでも人は殺人鬼にはならないものだ。
「動機」を描いた小説としては、ちょっと弱すぎると思ったな。
だから、そういう説明を説得力をもって描写するためには、それなりの背景が必要である。その背景が、子供の頃の大病では、ちょっと不足なのであろう。
誰だって、子供の頃に死にかけた程度のことは、まあ1回や2回はあるものじゃないか。それでも人は殺人鬼にはならないものだ。
「動機」を描いた小説としては、ちょっと弱すぎると思ったな。
教訓。「書店員推薦、も、信じすぎてはいけない。」今までハズレはなかったんだが、まあ、こういうこともあるんでしょうなあ。