Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

分相応

物故した作家で、ショートショートの名手として知られた作家、星新一は、ホテルのバー飲むのが好きだった。その理由を、ある本の後書きに書いている。たしか
「安全である」(暴力団の経営するぼったくりバーだった、ということがない)
「不明朗な勘定がない」(ホテルのバーは明朗会計である)
「バーテンがむやみとなれなれしくしない」
などであったと思う。

バー業界には「下りる」という表現がある。ホテルのバーのバーテンが、町場のバーに転職することを指す。ホテルのバーは、ステイタスがあるのだ。
その理由は、町場のバーと違って、水揚げに追われないからだろう。有る程度のホテルには、バーがあって当然である。つまり、売り上げをしゃかりきになって追求する必要がない。よって、客に愛想を振りまいて、むやみと話しかける必要もない。
宿泊客だけでなく、普通の人達も利用するのがホテルのバーである。

数年前までは、出張が多かった。私は、ひとりで出張すると、だいたいホテルのバーで飲む。一人でも気詰まりでなく、落ち着いて、有る程度の質の酒が飲める。
安いビジネスホテルに泊まるときなど、バーがないときもある。そんなときは、近隣のホテルのバーに行く。見知らぬ町で、下手な店を探すより、手っ取り早く、安心して酒にありつける。

麻生首相が、「ホテルのバーは安い」と発言したが、それはまったく当然だと思う。

しかしながら、前提がある。
総理大臣の給料は、およそ月300万円ほどのはず、である。それならば、ホテルのバーは、確かに安いのである。それが分相応であると思う。
たとえば、格安居酒屋に行って、3000円しか使わず「庶民派」を気取るのは良い。しかし、その結果、給料をがっちり貯金してしまう(というよりも、残ってしまう道理だが)のと、気前よくバーで散財してしまい、まったく残さないのと、どちらが良い宰相かということに関しては、一概に「居酒屋首相」が善だとはいえない気がする。民間にお金を還元する気はないのか?などと、いくらでも批判はできるだろう。

だから、もしも首相がホテルのバーに行くのが不都合だというのであれば、そもそも首相の給料を下げるほうが先決だろう。サラリーマン並の給料にしてしまえば、やっぱり居酒屋が良いだろう。
私だって、懐が寂しくなると、もっぱら居酒屋通いである。
独身なんて、給料日後はばーんと飲んでしまい、あとはチマチマ、そんなものである(笑)

日本国の宰相であるからには、それなりの給料というものがあろうし、その給料に応じたカネの使い方をせねばならない。ため込んで使わないのは、守銭奴である。一国の指導者に、あまり相応しい性格だとは思わないなあ。

臨調の土光さんは、目刺しに麦飯、味噌汁、漬け物というメニューが有名だった。さすが清貧だと、みんなが持ち上げた。
ところが、後日になってわかったことだが、目刺しは毎日直送、麦飯も漬け物も最高級品だった。それを批判する人もいた。
だけど、私は、それでこそ土光さんだと見直した。目刺しを食うのに、大枚を散じる。成功者のとるべき態度として、こんなに正しいことはあるまいと思ったのである。

私は、もちろん没落中であるから、最近はおとなしいもんである(笑)ま、分相応でいいんじゃないですかね。カネがあればあるなりに、なければないなりに。
そういうもんだと思うのだがなあ。