Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

「扉」ジャネット・フィッチ。

どうやら映画化されているらしい。「らしい」というのはいい加減な話だけど、私は映画を見ないので。
しかし、この小説はおもしろかった。昨年の年末に読んだ。

主人公は12歳のアストリッドという少女である。彼女の母親は、美しくて才能のある詩人でシングルマザーだ。
その彼女は、ある文学評論家の男と恋をする。しかし、そのうち男の愛はさめる。
怒る母親は、男をキョウチクトウの毒を使って殺してしまうのだ。母親は逮捕、入獄。
かくして、少女アストリッドは孤児となり、養父母達の間を転々とすることになる。

アメリカでは、このような子どもを預かると補助金がもらえる。だから、志願する子ども達が、必ずしも子どもに恵まれない愛情深い母親達のもとに行くとは限らない。
それどころか、もっとひどい扱いが存在する。
その中で、アストリッドは成長していく。
養父と関係をもってしまい、それが養母に発覚して追い出されたり(ありきたりだ!)、実に美しい子ども達がいるように見えて、実は全く食事を与えられなかったり(その養母は、実に豪華で快適な暮らしをしている)、
あるいは多忙すぎる男と結婚してしまった優しい女性が母だったりする。毎日、悲しみに暮れていた彼女は、ついに命まで失ってしまうのだが。
そして、ついに、アストリッドは、自立した強い女性に育つのである。
どんな苦労も、悲惨な経験も、若い彼女を育てる栄養となるのだ。

評価は☆☆。充実感もあり、リアルでもある。
小説として、かなり読ませる。アメリカで大ヒットしたらしいが、それは没落するアメリ中流家庭の描が真に迫っているからだろうと思う。
アメリカは、既に日本よりも重税国家となっており、中流は存在しなくなっている。金持ちになるか、あるいは政府からうまくカネを引っ張り出すしかない。
アメリカの政府は巨大であり、かつ、それなりに腐敗している。(どこの国の政府でも腐敗するものである)
問題は、いろいろな職業があるのだが、たいていの職業よりも政府にたかるのがもっと安全で効率が良くて、まじめに働くより良くなってしまったことであろう。
金持ち優遇ももちろんいけないが、弱者救済自体がひとつの利権として、これに多数の人がたかる構造はため息を覚える。
それなら、多少やんちゃだろうが阿婆擦れだろうが、独力で生きていくほうが、遙かに人間らしく誇り高い生き方である。
それが、ゴミ箱から食べ物をあさる生活だろうとも、だ。

このような社会が、日本の近未来図でないことを、祈りたいものである。