Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

反日と反中

反日と反中」横山宏章。

尖閣をめぐって中共と緊張感の高まっている我が国であるが、考えてみれば「靖国参拝問題」で反日の嵐が吹き荒れたのは2005年であった。
今、尖閣で再び反日デモとなり、日本企業は再び破壊されまくっているわけだが、では靖国参拝当時と何が違うのか?
そういう疑問もあり、すでに古典化している部類の本書を読んだ。
すなわち、2005年当時における「反日」「反中」の考察である。

一読した感想は「進歩なし」というものだった(苦笑)。
中共のいう「歴史認識」に根拠がないとはしない。
また、日本人の中にも「侮中」の気持ちがないとはしない。
これらは、近代以後の支那と日本の歴史によるものである。

しかしながら、日本の戦後生まれの世代にとっては、近代史によって「反中」になるわけがない。
本書の指摘にあるように、日本の「なぜ、日本の現在と、支那の過去を比べるのか?」という根本的な不満に対して、中共は回答をもっていないからである。

常識で考えるならば、すでに戦後処理は終わり、日中は国交回復して四半世紀を経ている。
日本だけの特殊な呼称として「(日中)15年戦争」というのがあるが、しかし、既に戦後70年を経ている。
実に戦争期間の4倍の歳月を経て、なお「現在と過去を比較する」中共の姿勢に対して、違和感を持つなと言っても難しい。

中共にも事情がある。近代史自体が、侵略されまくった苦難の歴史であったという支那の事情もあるし、その最大の侵略者が日本である。
そして、中共は基本的に、マルクス主義政党というよりは、実態は民族主義であり、八路軍が頑強に日本軍に抵抗したことから支持を拡大したという歴史がある。
すでに市場経済に舵をきった中共にとって、独裁権力の基盤は「反日の歴史」という民族主義以外にない。

結論。今後も両国の「反日」「反中」の克服は難しい。

評価は☆。
中共側の視点の紹介が日本側と対峙する形で置かれており、バランスをとろうと苦心した跡が見える。
もちろん、日本側の主張もかなり表面的な紹介となっており、これは中共側にも言えるであろう。
実際の両国の相克は、さらに深いものがあると思われる。

しかしながら、巻末近くに、台湾問題を絡めて今後の対支那のと関係改善の方向を示唆した部分は面白い。
なぜ台湾と日本の関係は良好なのか?
もちろん、歴史的な経緯もあるが、それ以上に、台湾が戦後、民主化を進めてきたことが大きい。
自由な言論と民主政府のもとであれば、日本としては基本的な価値観の違いがないのである。
これは、まさに日本国憲法70年の成果なのである。
もしも支那民主化したならば、おそらく、分裂は不可避であろう。
あれだけの大きさの国土と国民を統合させる単一の価値観の共有は極めて難しいと思うからである。
しかし、もしも支那が分裂、そこで民主国家が誕生したら、おのずと我が国との摩擦は解消されていくものではないか。

もちろん、中共はそんなことは分かっている。支那に民主政府が誕生するとき、彼らは終わりである。
だから、中共は、今日も反日を叫ぶ。
彼らには、ほかに生き延びるすべがないのである。
思えば難儀なことであるが、しかし、たまらんもんがありますなあ。