Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

R40のクラシック

「R40のクラシック」飯尾洋一。副題は「作曲家はアラフォー時代をどう生き、どんな名曲を残したか」

タイトルと企画がいい。
古今の名作曲家を集めて、その40代の時に何をしていたか?をテーマにした名曲ガイドである。

自分はアラフォーを終わってしまい、昨年、ついにアラフィフになってしまった(笑)。
相変らずヒーコラ言っている人生ではあるが、ふと振り返ると、やはり40代が大波乱というか、今日のすべての原因であるよなあ、、、と思う次第である。
まさに絶頂から谷底、右往左往、阿鼻叫喚のジェットコースターの人生であった(涙)。

しかし、周囲を見回すと、意外に同じような境遇の人が多い。
40代を無難に乗り切った者、うまく成長した者、つまづいた者、それぞれであるが、それが皆あとに大きく影響している。
まさに人生の後半生を決めるのが40代である、と思う。

さて、作曲家というとモーツアルトとかメンデルスゾーンとか、そもそも40代までに死んでしまう「夭折の天才」も多い。
これらの人たちの作品は、若書きであってもすでに眩しい才能の煌めきがある。
しかし、一方で、とてつもなく晩成の人もいる。

かのブルックナーブラームスだってそうである。
交響曲の作曲を始めたのは30台も過ぎてから。その後、どんどんと後期に向かって円熟していく。
ベートーベンが第9を完成させたのは50過ぎてから。
ヴェルディだって、70まで生きて、死ぬまで大傑作を書き続けた。
天才だって晩成はいるのである。
そして、これらの天才たちの40代は、ぜんぜん順風満帆ではない。
少しでも良い待遇、安定した生活を求めて右往左往している人も多いのである。
ドボルザークなんかそうだし、バッハもヘンデルもそうだ。
現代の悩める我々と同じような苦境の40代を、彼ら天才も同様に過ごした。
それだけでも、大きな救いではないか、と思う。

評価は☆。
とてもユニークで、かつ面白い名曲ガイド。


本書の冒頭はベートーベンで始まり、最後はアメリカの現代音楽の大家アイブズで終わる。
アイブズは、不協和音を駆使した斬新な作品を残したが、なんと本業は保険代理店であり、しかも大いに成功していた。
やり手の実業家だったわけだ。「不協和音のために飢えるのはまっぴら」という名言を残しているらしい。
そのアイブズだが、40代になり、悩むことが多くなったそうだ。
ある日、階下の奥さんのところに、涙をいっぱい貯めて下りてきたアイブズは言った。
「もう作曲ができない。なにもかもうまくいかない」
そう、アイブズの創作の泉は、40代で枯れてしまったのである。

私自身、そんなことになっていないか、と思うと、ぞっとするのである。
ん、待てよ。。。もともと、大した才能もないから、枯れても大勢に影響ないか(苦笑)