Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ジャンプ

「ジャンプ」佐藤正午

帰省したとき、あまりにヒマで昔の書庫から取り出し、すらすらと読む。時間つぶしである。
しかし、結構おもしろい。

物語のきっかけは、主人公の三谷が酒に弱いくせに、アブジンスキーなる強烈なカクテルを飲んだことである。
へろへろになった三谷は、恋人のアパートに転がり込む。
恋人は、三谷の日課である「朝のリンゴ」を買うために、コンビニに出かけていく。
ところが、彼女はそれきり帰らなかった。
三谷は、彼女を心配するが、しかし、翌朝の重要な出張のため、そのまま出かけてしまう。
そして、出張から戻った三谷がアパートに行くと、彼女が戻ったと思われる形跡があった。
しかし、彼女の勤務先に電話しても、急きょ休みをとった、というばかり。
そこに、心配した彼女の姉が現れて、二人で彼女の足取りを追うことになる。
わかってきたことは、その夜に、次々と彼女にハプニングが起きていたことだった。
ある程度の足取りはわかったものの、三谷には、彼女がなぜ突然、姿を消したのか?という疑問は晴れなかった。

そして5年後。三谷は別の人と結婚している。
偶然から再会した恋人から聞いた真相は、驚くべきものだった。
しかし、三谷は、その真相を封印することに決めたのである。

評価は☆☆。
なるほど、ねえ。これはミステリというには弱いけど、ひとつの恋愛小説としてみれば、まあ悪くない。
失踪というドラマチックな展開を除けば、たぶん、誰にでもありそうな。
その「誰にでもありそう」な「物語」というところが、大きな反響を呼ぶんだろうな。
著者のヒット作である。

別に一杯のカクテルにこだわらないが、人は、どこかで何らかの「決断」をしているものだ。
受験や就職に限らない。
この仕事をするかしないか、友人の誘いにのって「もう1軒」行くか、行かないか。
電話するか、しないか。
出かけるときに、早めに行くか、それともギリギリでいいか。
実は、そんな細かい決断によって、偶然が作用し、人生が大きく変わることもある。

もしも、あのとき。
そう思わない人はいないんじゃないかな。

私も、少し前までは、よくそんなことを考えた。
今は、あまり思わない。
なぜって「どっちにころんでも、どうにもならない人間」だと、自分のことを見切ったからである。
今でもろくでもない人生だと思っているが、しかし、これ以上に良い展開があったとも、思えないのである。

もしも、再び生まれ変わることが合ったら、また同じ人生を歩むだろうか?
私はまっぴらごめんという気がするが(笑)しかし、また同じ轍を踏んでしまう予感も、すごく強いのである(苦笑)。
どこまでいっても、根本的な部分で、阿呆なのだ。
しなくても良い苦労をしょいこむ。

「あのとき、違う決断をしていたら」と、ずっと思える人がうらやましい。