Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

バカに民主主義は無理なのか?

「バカに民主主義は無理なのか?」長山靖生

著者はSF作家である。正直すごく高名ではないけれども、でも中堅とはいえる。
本書のAmazonレビューを読んでいたら「こんな無名の人の愚痴交じりの政治談議を読まされるのは苦痛」だと書いてあったのには笑った。
政治談議が大好きな人達は、きっとSFなんて読まないんだろうなあ。

しかし、こういう突き放した、シニカルなスタイルは、SF作家としてはごく正道なものである。
現実を、ぜんぜん現実でない立場から見るのだから、知的遊戯に近い。
「政治を遊戯の道具にするとは何事かっ!」
そういう偏狭な精神では、結局のところ、一番大事な時に、なんともならんわけである(苦笑)。

さてと、目次。

第1章 日本人は、いったい政治に何を望んでいるのか?
……日本の民主制が危機におちいっている理由

民主主義だダメだと言う人が言いたいのは「私の話を聞け!」ということである。人の話を聞こうとは思っていないんだな、これが(苦笑)
そういう人ばかりなので、だいたい、民主主義はいつも「なってない」わけだ。

第2章 「自由」と「平等」に、根拠はあるのか?
……民主制の歴史と、展開

歴史的なお話。ホッブスやらロックやら、ルソーやら、マルクスノージックまで。
このへんは学校の復習。(ここ、ちょっと惜しい)

第3章 日本国憲法、何か問題でも?

日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続きにそって改正、発布されている。したのは誰か?もちろん、大日本帝国憲法における主権者、天皇陛下である。
つまり、今の日本国憲法は、おそれ多くも陛下がくだされたものである。
誰だ、押しつけ憲法なぞといっているやつは?
文句を言う資格があるのは、改正当時の主権者たる陛下だけじゃん(爆)

第4章 戦後の日本政治は、何を積み残してきたのか?

吉田茂から、悲劇的かつ喜劇的な(苦笑)民主党政権の終焉まで。

第5章 バカに民主主義は無理なのか?
……輝かしくない日本の未来に向けて

まあ少子高齢化、特に地方の人口減少、日本の経済的な地位の低下、政府債務の多さやらなんやら。
どうみても輝かしくない日本の未来と民主主義の問題。
一票の価値の平等は、都市住民の地方切り捨ての欲求だ、とか。

かなり刺激的というか、まあ、思わずニヤニヤしてしまうテキストの連続。
もちろん、しっかり楽しませてもらった。
評価は☆☆。

私の考えからいえば、バカに民主主義は無理なのは、百も承知である。
ついでにいえば、ある人物がバカかどうか決めるのは、もちろん本人ではなく、その周囲の人間である。
だいたい、民主主義に文句をいう人にとって周囲はすべてバカなのであり、あるいは「この国の民主主義を憂える人」にとっては、周囲は自分の話を聞かないゆえバカである。
そのバカ同士が、なんの因果か、同じ国で民主制なるものをやっているのである。
であるから、民主主義とは、そもそもバカの寄せ集めが、どうせ収拾がつかないので、適当なところで手を打つべい、という制度なのである。

ついでに言えば、民主主義に文句を言わないのも、たいがいバカだから、こりゃもう決定的なのだ。

もちろん、えっへん、かくいう私もそういうバカなのである。

結論。
バカに民主主義は無理なのではなくて、民主主義こそバカのものである。バカによるバカのための民主主義、万歳!