Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

日銀、出口なし

「日銀、出口なし」加藤出。

2014年に刊行された本で、アベノミクスの第一の矢「異次元の金融緩和」の出口が相当に困難であることを解説した書物である。
本書にも指摘があるが、現代では「中央銀行が完全に景気をコントロールする」のは不可能である。
マネタリーベースの増加(国債の買い入れによって市中銀行に通貨を大量に供給すること)を行っても、おそらくインフレ解消につながらないのも指摘されていた。
それでも、黒田総裁がこのような政策を行ったのは「シャーマン効果」を狙ってのことである。
「シャーマン効果」とは、自己予言性のことで、つまり日銀総裁が「カネを供給するぞ、インフレになるぞ」と触れ回ると、それを聞いた人々がその気になってくれて、結果として予言は成就する、という原理である。
では、実際にはどうなったか?

市中銀行にカネは供給されたが、超低金利であるので、銀行は国債を買って日銀に売るだけでブタ詰みにしただけだった。
薄利とはいえ、それでも利益が出るからである。冒険心の欠片もないのだなあ。
躍起になった日銀は、ついにマイナス金利を導入した。「なにがなんでもカネを出せ、ブタ詰みするなら金利をとるぞ」とやったわけである。
そこで仕方なく、銀行は貸し出しを始めた。その対象は土地である。なので、防火壁のない手抜きアパートやら30年一括借り上げというペテンの安建築がぽこぽこ出来た。
政府が期待した新産業分野へ資本を投下する、なんてことは起きない。
いつのまにやら安倍さんも「三本の矢」フレーズをフェードアウト。肝心の三本目の矢、構造改革がまったく進まないのだから、看板を上げるのも恥ずかしくなったのであろう。
そうするうちに、日銀が大量に買い入れたETFのおかげで、計算するとユニクロ筆頭株主が日銀である!というような「社会主義国家かよ」状態が到来。
いよいよいかん、というので17年からこそっと買い入れペースをダウンしている。
折からの支那経済の低下と重なり、日経平均が2万円を巡る攻防に逆戻り。
まあ民主党政権のときよりは100倍もマシなのだが、これで本格的に「出口」になれば、さらにメッキが落ちるのではないか。
官製相場のお仕舞いとなれば、まず外国人の引き上げがはじまる。
おそらく、2020東京五輪までは、なにがなんでも「2%のインフレ」を目指す(口だけは)だろうけど、そのあとが怖くなってくる。
本書にあるようなハイパーインフレが到来、というところまではいかないと思うが、それでも財政再建の姿勢が見えないと、円の信任が崩れる可能性がある。
過度の円安は、今の日本の構造上、とてつもない物価高を招くので、市民生活が破綻してしまう。
出口戦略としてあり得るのは、おそらく、国債の市中放出を押さえて、満期を待ちつつ、政策を元通りの漸進策に修正するよりほかにないだろう。
早い話が「失われた20年」を、さらに10年延長するのである。
破滅的なクラッシュをするよりはマシだろう、ということである。
その間、ずっと低成長が続くことになるが、それはそれで仕方がない。
高齢化社会が到来して、ずっと苦しい時期が続くが、そこは忍の一字で堪えるだけである。。。


まあ、本書にそう書いてあるわけじゃないけど、おおむね、そんな展開にしかできないだろう、ということなのである。
もちろん、口では「構造改革」とは言える。
しかし、やれるもんならやってますって。
無理だからこうなった(苦笑)。
議論はかなり説得的で、良書である。☆☆。

今や、テレビも日本以外の国で日本ブランドを見ることは少なくなったが、たとえばITである。
GAFAというが、グーグル、アップル、フェイスブックamazon
マイクロソフトがウィンドウズを発売してからIT革命が始まり、日本でも「渋谷系」とかIT革命の寵児のような顔をした連中がカネを集めて偉そうにしていたのである。
それがどうか。あのiモードすらスマホに食われてオワリ、日本はIT後進国になってしまった。
キャッシュレス決済とAIでも、支那と米国のはるか後方に追いやられている。
三洋もシャープも中華へ。東芝原発でメシも食えず、虎の子の医療機器も売り払う始末。(メシも食えない原発をいまだに推進している人のアタマの中身はわからないね)
日立だって同様である。
ソニーはゲーム機に浮沈を左右されるゲーム屋になりさがった。
これでトヨタがこけたらオシマイなのだが、電気自動車+自動運転になればITの地力が物を言う。
ビッグデータの中華と米国に勝てる要素は限りなくない。

日本の救いは2つある。
ひとつは海外資産であって、優良な海外子会社やら利権を持っているので、貿易外収支でまっくろのくろなのである。
働かなくても儲かるのだから、これはいい。
それと文化である。
日本の企業はダメだが、秋葉原オタク文化は世界を席巻している。
底辺労働で頑張っているアニメーターや声優、結婚もしないでグッズを買い込むオタクたちのおかげである。
今や、かれらこそ愛国者なのである。

私も50代なかばなのですが、逃げ切りは危なくなってきたな、と思う。
今の団塊は良いのですが、団塊ジュニアは氷河期でボロボロ。
ちょっと上のバブルおじさん世代が、おいしいところだけ味わって、ということかなあ。
よほど、前世で徳を積んだ方々なのだ、と思いますなあ。