Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

夏の翳り

「夏の翳り」ジョイス・メイナード。

13歳というのは特別な年齢だ、と著者は言う。まだ子供である、子供の世界にまだ住んでいる。しかし、徐々にオトナになろうとする年代である。
主人公のファラは13歳の女の子で、3歳年下の妹パティがいる。
パティはすこし変わった子で、友達が学校で出来ず、いつも姉にくっついている。姉とは普通に会話できるのだが、他人相手だとしゃべれなくなってしまうのである。
父親と母親は離婚。ただし、互いにそれを公表してはいない様子である。
父親はイタリア系で、気が多いラテン系の典型であり、世界中の女性を素敵な気分にさせる魔法を持っている。(笑)
ところが、その魔法に世界でただひとり、ひっかからなかったのが母親だった。
父親の仕事は刑事である。「観察眼が大事だ」というのが父親の口癖だ。

子供達は母と同居しているのだが、母は働きに行くか図書館に行くかの生活で、子供達の食事すらまともに作ろうとはしない。
ファラとパティはお腹が空くと、勝手に冷蔵庫や棚の中をあさって、食べられるものを食べるのである。
シングルマザーの母は労働より読書に意欲が向いているようで、家は請求書の山であり、ケーブルテレビも切られた。
ファラとパティはテレビを見るために、隣家の庭に遠征し、その窓からリビングのテレビをのぞき込むことにしている。
ただし、音は聞こえない。
そこで、二人はテレビの画面に合わせて、適当な物語をつくって遊ぶのである。
(本当のテレビよりも楽しい、とファラは言っている)

さて、そんな暮らしの二人がいつも遊び場にしている裏山で、殺人事件が起こる。
若い女性がレイプされた上に殺される、という事件だった。
さっそく警察が動きだし、捜査主任に二人の父が任命される。
そうするうちに、続々と同じ手口の事件が起こり、女性の被害者が増えていく。
事件は連続殺人鬼の手によるものになった。
報道は沸騰し、捜査についてコメントする父には逮捕の期待がかかる。
ところが、なかなか犯人逮捕にいたらない。
そして、被害者だけが増えていく。
深夜に、父親は母のところに現れるようになる。ひそひそ声で会話するのが聞こえるのだ。
父は、犯人逮捕できない弱音を母にもらす。追い詰められた父の話相手は、やはり母だったのだ。
そして、もう一人。離婚の原因となった父の相手、マーガレット・アンである。

ファラは、少女らしい想像力を駆使して、父の窮状を救おうとする。
隣家で犬の散歩をパティに依頼しているダンス教師の人物が怪しい、とにらんだのだ。
その人物の女装趣味を目撃してしまったからである。
このような変態が、犯罪をおこしたのに相違ない。
そして、ファラは、自らを囮として犯人をおびき出す芝居を打つ。当然、この行いはみじめな失敗に終わる。
おかげで、父は、娘の監督不行届で閑職に追いやられれてしまうのだ。
それでも、父は娘を責めることはなかった。
そして、この事件のおかげで刑事の娘として顔を知られてしまった二人は、いつもの裏山で、ついにある人物と対峙する。
絶体絶命のファラを救ったのはパティの奇策とBB弾だった。。。


うーん、面白い!
ミステリというよりは、姉妹愛、そして親の愛を丁寧に描いた作品である。
そして、全編に13歳の「あの頃」を思い出させる雰囲気が横溢している。見事である。
評価は☆☆。

13歳の頃の自分を思い出すと、この本の少女よりも、さらに子供だった。
誰か気になる女の子もいなかったしなあ。そもそも、そういう意識がまだまだであった。
それよりも、部活で始めた弓道が面白くて、毎日頑張っていた。
腕がぱんぱんになるまで腕立て伏せをやって、少しでも強い弓が引けるようにしようとしていたのだ。
もっとも、生来のひょろひょろ体質の自分が激変することなんか、ついぞなかったわけだが。
思えば、ずいぶんと時が経ってしまったことである。

トシをとってくると、想像力も、大金が儲かるとか(笑)珍しく女性にモテルとか(苦笑)だんだんつまらなくなってくるのである。
子供の思いこみとは、今思えば、ずいぶんと純粋なものだったなあ、としみじみ。