Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

逆説の日本史 近世爛熟編

井沢元彦の「逆説の日本史」シリーズは大変おもしろく、書店で見かけるたびに買い求めては週末に読んでいる。といっても、熱心な読者というわけでもなく、見かけたら買う、くらいである。

このシリーズは、実は第1巻の「古代黎明編」が秀逸だと思う。いまだによくわからない古代史の時代の話なので、作家的想像力全開だし、そこで見出した「言霊信仰」と「怨霊」がその後のシリーズを貫くバックボーンになっているからだ。

今回読んだのは「近世爛熟編」で、江戸時代の綱吉から正徳の治の新井白石あたりまでを取り上げている。

 

忠臣蔵は実は「復讐譚」ではない、という指摘。まあ、これは荻生徂徠の説と同じ。

ただ、浅野内匠頭の弟の大学のによる存続が認められないという不平等に怒っての決起、という指摘はなるほど、と思った。

私は、実は忠臣蔵の黒幕は、浅野内匠頭の妻だった「浅野あぐり」だと思っている。すべての活動に必要なものはカネである。四十七士が決起するのに、もっとも必要だったのはカネに違いないわけで、そのカネを出した人が黒幕に決まっていると思うのである。

 

綱吉名君説。これは、意外に最近になって「生類憐れみの令」を評価する声が出ている。世界初の動物愛護法だからである。本書では、むしろ戦国の気風からの転換、つまり初めての「人命重視政権」だったことを指摘しているが、これも尤もと思う。

ちなみに、綱吉の祖母は朝鮮人だったらしい。

 

新井白石、じつは大したことはないんじゃないか説。ま、しょせんは儒学者だからねえ。意外に勤王派だったのでは?という指摘は斬新。あるかもしれない。

 

そんなこんなで、ま、日本史を一通り知っていると、とてもおもしろい。いつもの井沢節ということで、評価は☆。

 

そろそろ昭和も遠くなってきて、昭和史も歴史になりつつある。

もちろん、戦争が一番大きなテーマにはなるだろうけど、その後の戦後復興も特筆すべきだと思う。

しかし、よくよく考えてみると、日本が経済大国として、あわや米国を凌ぐか「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われたのは、実はあの時だけなのだ。

以前も以後も、日本がそれほど抜きん出た経済力を持っていた時代はない。そりゃ、江戸時代の江戸は世界一の人口を誇る都市ではあったが、参勤交代といういびつな制度が生んだ、男性過剰のアンバランスな消費都市である。まともに(?)発展したとは言い難いところがあって、そういえば、戦後の地方都市から続々と若者が就職のため上京するものの、実は家族を持てないものも多数、、、なんて状況は、歴史的な伝統かもしれない。私もそんな一人なわけですが。

早い話、「失われた10年」「いや、失われた30年」とか言ってますが、よくよく考えると、そもそも高度経済成長時代とそのピークであるバブル時代が異常なのであって、日本はだいたい、世界の中ではさほど突出した国ではないよ、というほうが平常運転かもしれないと思うのである。

そう思うと、つまり「夢よもう一度」的なアベノミクスがうまくいかないのも当然で、そら土台無理な話ですがな、なんてことも思うのである。

ま、現状、どう転ぶかわからない総裁選ですが。この際なので、大コケしない程度にマアマアましな生活を実現するくらいの、マッタリした政策を掲げる候補がいてもいいのかもしれません。

寂しい幕引き

菅総理大臣ですが、本日、総裁選不出馬を表明しました。

これで、自民党は総裁選で新総裁を選出し、あたらしい体制で衆院選に臨むことになりました。

 

菅さん自身は、続投の意欲は満々でした。

しかし、岸田さん対策なのか、後ろ盾の二階さんはずしを表明したのが敗着でした。

二階さんのあとの幹事長に誰もなり手がいない。

理由は簡単で、このままだと、次の衆院選は負けそうだからです。そうすると、新幹事長は敗戦の責任を取らされて、菅さんともども、お役御免になります。

三日天下の幹事長なわけで、そんな役回りは、誰だって嫌に違いない。

結局、菅さんは解散も打てず、党の人事も行き詰まり。まさに死に体になってしまい、ついに政権を諦めざるを得ないことになってしまった。

 

なんで、これまで後ろ盾だった二階さんを切るようなことをしたのか。

それは、二階さんに対する世論の厳しさを感じていて、岸田さんの公然とした二階批判に党内世論が持っていかれる危機感を感じたからでしょう。

しかし、それでも、二階さんを切るべきではありませんでした。

菅さんの焦りが、大きな読み間違いを呼んだのだろうと思います。

こんなミスをするようでは、たしかに総理大臣は務まらないでしょうから。

 

思えば、菅さんも、損な役回りでした。五輪の件だって、「1年」と決めてしまったのは、前任の安倍さんです。菅さんは、コロナ状況の悪化の中で、粛々と五輪をやるしかなかった。違約金は莫大ですし、さらなる延期は、やはり巨額の費用がかかる。それをすべて日本持ちになってしまう。バッハは、安倍さんの「1年」のとき、次の延期はすべて日本負担だと言質をとっていましたから。

コロナで財政が急速に悪化する中、五輪でさらにカネを使うのは困難だった。

大幅な予算超過となった五輪ですが、それでも、菅さんにとっては「一番カネのかからない方法」として、無観客開催を選ぶほかなかっただろうと思います。

誰がやっても困難な時期に、無駄なお荷物が多すぎたのは菅さんの不幸でしたが、前政権の官房長官ですので、やはり責任を逃れるわけにはいかないでしょう。

たいへんご苦労さまでした。

 

さて、自民党は、、、、たぶん、岸田さんで決まると思いますが。

コマ不足、焼け野原のような人材状況ですからねえ。

前途多難だと思いますなあ。

まだまだ序章

池袋暴走自動車事故の飯塚院長サマですが、本日、地裁で判決。

禁錮5年の実刑判決で、院長サマが主張してきたクルマの異常は認められませんでしたね。

ま、その判断は妥当なんだろうと思います。

しかし、実刑判決ですから、かなり裁判長は頑張ったかなあ、という印象。

「殺人ドライバー」という本の書評で書きましたが、実際に交通事故で、まず一人なら間違いなく執行猶予。二人でもかなり執行猶予がつきます。日本では、自動車に比べると人の命は軽いのです。

まして、今回はドライバーが高齢ですので、もしも院長サマが反省していたら、執行猶予がついたのではないかと思います。

 

これは日本の裁判制度の問題でもあるんですが、無罪主張をすると「反省がない」と見られる。過失ではないけど、結果は重大なので反省しています、という主張はまず通らないですね。よって、弁護士によっては、被告人が初犯の場合は執行猶予狙いで、あえて罪を認めて反省した態度を示すようにアドバイスすることもあるようです。

 

そして、日本の裁判のもう一つの問題点は、時間がかかること。

この判決を受けて、院長サマが素直に塀の向こうに行くとはとても思えず、おそらく控訴するんでしょう。

で、高裁でも不満な判決であれば、さらに最高裁へ上告する。何年もかかるでしょう。

さらに変な話なのですが、もしも高裁で執行猶予付き判決が出た場合、検察が納得するでしょうか?世論を見て考えるでしょうが、たぶん、納得しないでしょうから、やっぱり上告することになる。

つまり、この裁判はどっちに転んでも、最高裁まで確定だと思うんですよ。

院長サマの年齢を考えれば、「逃げ切り」になる可能性が高いでしょうね。。。