Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ブラッドマネー博士

P・K・ディック様である。
新訳ということだが、確かに昔読んだサンリオ版よりも読みやすくなっている。

核戦争後の人類は、すでに機器製造のテクノロジーを失っており、日常生活を維持するのに一番の存在は修理屋になっている。
車椅子にのり、奇妙な超能力で修理をする男。
核ミサイルの引き金を引き、身分を偽っていきる男。
人工衛星にのって、核攻撃をのがれ、地上にラジオ放送をおくるDJ宇宙飛行士。
体内に双子の兄弟をもつ女の子。
ディックワールド全開だけど、解説に書いてあるようにストーリーの破綻がないので、読みやすい小説になっている。だけど、いつものディックを期待すると、ちょっと不満か?
ストーリーが破綻していく痛々しさも、またディックの魅力だもんなあ。

そういう意味では「これからディックを読んでみよう」という人向けにはいいかも。
そういえば「アンドロ羊」も核戦争後の世界の話だった。

「暗闇のスキャナー」「流れよ我が涙」「パーマーエルドリッチ」などの後期傑作には及ばないように思う。

訳が良かったのと、ラスト近くの意表をつく展開は引き込まれる。☆☆で。