Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

日本人なら知っておきたい神道

「日本人なら知っておきたい神道武光誠

靖国議論のなかで、神道に関して改めて興味を持ったので、よくまとまったと評判のこの本を読んでみた。
一読、目からウロコがおちた思いである。

著者は平易に、神道についての成り立ちから、神道的解釈まで説明してくれる。
また、神道が国家に利用されてきた経緯であるとか、仏教との習合に関しても明快だ。

私は、ネットで調べて神道独特の概念とされる「荒魂和魂」の概念に納得がいかなかった。私の知るところの神道とは、全然別だと思った。この本は簡単に、上記概念が「流行神」を「平田神道」で解釈したものであり、平田神道自体が神道の歴史の中では異色な解釈であること、神道の中心概念が「産霊(産土)」であることを指摘している。
また、大和朝廷が全国支配を固めるために「天津神」を「国津神」の上位においたことなどの説明も明快だ。うらみをのんでしんだ「自縛霊」などの概念が、もともと神道にないことも説明してくれる。

この本を読んで知ったことだが、神道では「自殺した人」「犯罪や事故などで、非業の死を遂げた人」も神様になることに妨げない、と言っている。それが別に「荒魂」だからじゃない。もともと、本来では神道でそのような概念がないそうである。

この本は、決して天皇崇拝主義でも未熟なシャーマニズムでもなく、日本人のメンタリティをつくってきた神道に関する指摘であふれている。
自然にも、人にも、道具にも神が宿ると考える日本人の特性が、大切にしたモノに神がやどり、ひいてはモノをつくる人に対する尊敬につながっていったという指摘など、非常に興味深い。

ちなみに、靖国神社に関しても明治以後の神社の一つ、という扱いである。特別扱いはない。それで良いと思う。

親しみやすく、読みやすく、良くまとまって過不足がない。これは良書である。左右両派、どちらの方が読んでも納得されること請け合いだ(笑)
「日本人なら知っておきたい神道」という題名そのままの著作である。

評価は☆☆☆である。文句なし、三つ星だ。
買って読んで、決して損にはならないし、手放さないで手元においておきたい書物である。