「国家の罠」佐藤優。
筆者は、あの、鈴木宗男代議士の「お世話係」として有名になった「外務省のラスプーチン」である。
あまりに一部で世評が高いので、思わず読んでみたんである。
一読、驚いてしまった。
何が驚くって、筆者の博覧強記、極めて高い分析能力である。これは、本物のアタマの良さである。
思わずうなってしまった。
筆者は、この本を拘置所の中で、記憶をたどりつつ記述したのだ。
驚異的な知性というべきである。
あの「鈴木宗男事件」がなんで起こったのか?
「田中真紀子対鈴木宗男」の舞台裏、外務省の「害霧省」ぶりが、あまさずつづられている。
もちろん、本書の内容を100%信用することはできない。
しかし、たぶん、70%以上、真実だろうと思う。
日本の外交政策について
1)親米主義・・・冷戦後の世界唯一のスーパーパワーに随行する路線
2)アジア主義・・・中国をはじめとしたアジア圏の一員としての立場を強調する路線
3)地政学論・・・日本、米国、中国、ロシアの4カ国の力のなかで独自路線を発揮
という分類で、「日本は明確に”親米”に舵をきった」という論評は、なるほどと思わせる。
(しかし、その決断の背景分析については、私にはちょいと異論があるんだけど)
また、最近の日本の傾向として「国際協調主義」の衰退、「ナショナリズムの台頭」をあげ、一方でナショナリズムについて「過激なことほど正義になる」と警鐘を鳴らしている。
これは、心にとめておきたいと思った指摘であった。
とにかく、知的スリルに満ちた一冊。
素直に「面白い」というしかない。
下手な小説より、全然上。
評価は、文句なく☆☆☆。
もちろん、今の時代性、を加味している。
あと10年後なら、この本はたぶん☆~☆☆なんだと思う。
でも、そういう本だって、あって良いと思うのだ。