Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

結婚のアマチュア


もう秋だ。
ロードレーサーを引っ張り出し、夏の終わった秋の海を見るために、東京湾若洲海浜公園まで走る。
海は白っぽく、沖をフェリーがのんびりと航走中。
ベンチでコンビニおにぎり(梅)を1個とお茶の簡単な昼食をすませて、もってきた本を読む。
「結婚のアマチュアアン・タイラー

物語は、パールハーバー当日の二人の若者の出会いから始まる。
マイケルとポーリーン。たちまち二人は恋の熱狂のとりこになる。
マイケルが出征、除隊後、二人は結婚。
やがて、子供が出来る。
子供ができても、マイケルはポーリーンが理解できない。なんで、あんなにちょっとのことで、自分勝手に気分を変えるのか?
ポーリーンはマイケルのことが理解できない。なんで、いつも自分一人で分かったような顔をして、おもしろみがないのか?
やがて、子供は失踪してしまう。自分の子供が何を考えているか分からないほど、二人は夫婦だった。父母にはなれてなかったのだ。
何時の間にか、失踪した娘に孫ができて祖父母になる。
家を買い、経営していたお店を大きくし、孫が成長し、二人はささいなことから何度となく夫婦げんかをして、ある日、ついにちょっとした口論から別居。やがて離婚にいたる。
マイケルは、再婚する。「あのとき、この娘のほうを選んでいたら?」と考えた相手。再婚後も、雪が降ればポーリーンの家(かつては自分も住んでいた家)の雪かきをする。彼女が、そういう家事ができないことを知っているからだ。
やがて、ポーリーンは自動車事故で死亡する。
失踪後、はじめて帰ってきた娘は、孫に会いたいという。孫は、会わなくても良い、会いたくないという。
マイケルは、そうだろうなと言って、みんなの非難を浴びる。
彼は、年老いて、再婚した妻にとって自分は「デザート」だと思うようになる。それは、あれば良いが、なくても良いものだ。彼女には、自分は必要不可欠ではない。

そして、老いた身体で懐かしい町を散歩しているとき、どこかにポーリーンがいるような気がする。
あれほど理解しあうことができず、別れたはずなのに。
再婚後、20年がたっても、まだポーリーンがどこかにいるように思ってしまうのだ。

物語は、淡々と流れる。60年の歳月を、ただ描く。

読了後、私は自分のことを考える。
結局「結婚のアマチュア」にすらなれなかった自分が居る。
理解し合う以前に、そう考えることすらなかったのだろうか。
かつて、一緒に暮らして別れた女性のことを思う。
なんで、あのとき、ああだったのか。自分は、しょせん、小さな人間であったと思って、胸がつまる。

気がつくと夕方である。私は、ロードレーサーに再び乗って、帰路につく。
誰も待ってはいないけど、それでも私の居場所だと思う場所へ。

評価なんて超越している。この本を、評する資格なんか、私にはないのだ。
ただ、読んだ。
その夜は、ウィスキーのソーダ割りを飲まないと眠れなくなるのだ。そんな本である。