Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

地政学と防衛について

もしも、あなたがどこかの国の将軍で「日本を攻めろ」という命令を受けたとしよう。
さて、どのような作戦を考えるだろうか?

1)日本は島国だ。大艦隊を率いて攻めに行く。日本の海上及び航空自衛隊との決戦案。
下手をするとバルチック艦隊の二の舞。短期決戦は何が起きるか分からない。もっと確実な案を。

2)面倒だから核攻撃。
報復がきたときはこわい。日本は非核装備国だし、唯一の被爆国。つまり「代理報復」の言い訳は可能。日本攻撃は良いが、自国が滅亡するのは割に合わない。だいたい、自衛隊の侵攻能力は低いので、そんなリスクをおかす必要はないだろう。

3)ゲリラを潜入させて核施設を破壊。その隙に攻めよう。
一見良案に見えるが、日本の核施設はすべて軽水炉黒鉛炉とは違って、原理上、メルトダウンまでは至らない可能性が高い。(簡単にできる、といってる人がいるが、工学上では難しいようだ)騒ぎはおきるかもしれないが、まあ、それだけじゃないか?

以上の3案は、及第点はとれないだろう。
もっと簡単な方法がある。つまり、アメリカが大東亜戦争のときにとった方法だ。シーレーンを攻めるのである。これなら実証済みだ。
日本の石油及び鉄鉱資源は、その95%が東シナ海を通って運ばれる。これを、潜水艦を使って撃沈する。そうすると、資源のない日本は、たちまち首が絞まる。あとは、物資不足で降伏するのを待てばよい。なにも危ない橋を渡って、正面決戦なんぞする必要もない。
通商破壊は、基本的な作戦なのだが、日本のような無資源国で島国であれば、もっとも効果的であるのは当たり前である。
通商破壊だって難しい作戦であるけど、正面決戦に比べれば遙かに楽だ。

さて、今度は逆に守る日本の立場になって考えてみよう。
そうすると、「台湾」「沖縄」東シナ海が、たいへん重要であることがわかる。ここを握られたら、また竹槍をもつしかないのである。近代文明は、石油と鉄がなくては成立しない。
防衛について結論を申せば、日本は、この海域を守れない国と同盟しても意味がないのである。
たとえば、ロシアは強大だけど、ウラジオストック経由で資源輸入は少ないし、ロシアに東シナ海を守ってくれと言ってもムリであることは、地図をみればすぐわかる。
とすると、答えは「米国」「中国」の2国しかないのだ。
つまり、日本の外交政策は、少なくとも防衛を考えた場合に「親米」「親中」の2路線の選択しか考えようがない、ということである。

米国は、台湾を支援し、沖縄に基地をもっている。さらに南にはフィリピンがある。この関係がなければ、いかに米国でも東シナ海を守ることはできまい。
逆に中国の立場で考えると、東シナ海に覇権を確立すれば、日本を衛星国にするのはたやすい。そのためには、台湾、沖縄(尖閣諸島は当然として)をなんとしても入手したいと思うはずである。
そう考えて、中国の動きをみていれば、よく理解できるようになるはずだ。
これは、中国の覇権を東に向けて確立するという戦略を考えた場合に、避けて通れぬ基本線である。

このように、地理的条件によって、国家の基本戦略が規定されることを「地政学」という。日本は、地政学の上から、親米か親中しか選べない。
「両者のバランスをとって、第3勢力を」などというのは、愚論きわまりない。自前で、資源の輸送路を守れない国が、軸になれるわけがないのだ。単に危ない火遊びでしかあるまい。(その意味で、元外務省の佐藤優氏の地政学論には基本的誤りがあると思う)

小泉政権は、一貫して「親米」路線をとっている。
「日米がうまく行けば、中国、韓国、その他アジアとの関係もすべてうまく行く」と小泉首相は語った。
これは言葉が足りないので、他に選択肢がないというべきであろう。
だって、「親中」を選択肢にはいれないだろう、普通。あの中華の周辺国家は、そらもうムチャクチャでんがな(笑)

逆に中国から見ると、日米関係が鉄壁であるのは、目障りで仕方がない。
今回、胡錦涛主席は「日本が靖国参拝するのはけしからん、戦勝国をないがしろにするものだ」とブッシュ大統領に語りかけた。ブッシュ大統領は「自分の父親も日本と戦って負傷したが、今では日本を許し、日米両国はよい関係にある。あなたもそうしたらどうだ?」と言ったそうである。
戦後60年の歴史で、米国と日本は和解を果たした。米国は、日本人が戦没者のために靖国参拝するのは当然だという態度である。
一方、同じ60年の歳月を閲して、日本は中国にも韓国にも多大な経済支援を行い、しかし彼らは日本を許さないと言う。
かつて、連合国の総大将が米国であったことは異論があるまい。その総大将たる米国は、すでに日本を許している。このことは重要だ。

私は、米国すべて礼賛、とは思わないし、あの国におかしな点があることも良く承知している。

だけど。。。
どちらか選ばねばならぬのが日本の宿命であるから、私は迷うことなく米国をとる。理由は、申し上げるまでもない。
いつだって、人間は、理想ばかりを追求できるわけではない。文句を言えば、キリがないのだろう。

二元論の止揚が可能だという思想そのものが、一つの人間の思い上がりだろうと、シューベルト「未完成」を聞くたびに考えたりしてしまうのである。