Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アピールの裏側

ASEAN会議で、小泉首相が中国の温家宝首相に筆ペンを借りる姿を見た。
さすがである。このようでなくては、外交はできない。

とまどう温家宝首相であるが、まさかそこで拒否はできない。ASEAN首脳注目の中である。そこで「ペンを貸さない」とやれば「心の狭い大国中国」になっちゃうから。
仕方なく小泉首相に筆ペンを貸す。小泉首相。さらさらとサイン。にっこり笑って返却。期せずして、ASEAN各国首脳からは拍手が巻き起こったという。

うまい。実にうまい。「手をさしのべる日本、不承不承の中国」を見事にアピールしてみせた。

その前に、小泉首相靖国問題に関して「日本は中国韓国にわだかまりを持っていない。問題にしているのは中国韓国の方である。靖国問題は、心の問題である。日本は、戦後の経済支援と謝罪をずーっと行ってきたではないか。」と演説している。
その伏線が見事にきいた。これでこそ、外交というものである。

日経新聞によると、ASEAN会議の主導権争いで、日中の争いがあり、日本の影は薄いという。当たり前である。ここで、濃くする理由なんかない。欲ボケ新聞は、もうちょっと考えてからモノを云え、といってもムリか(^^;)

中国の立場でものを考えてみよう。
つまり、中国が海洋軍事プレゼンスを発揮するとしたら、「日本海」「東シナ海」「南シナ海」の3つしかない。「日本海」は現在、日本が押さえている。東シナ海は、日米台湾という連合があり、だからこそ尖閣諸島が大事で、くさびを打ち込みたい。だから日中中間線で無茶を言ってごねておく。海底資源は、実は採算性が大してよくないけど、プラスマイナストントンなら利権を確保しておきたいいのは、ゆくゆく台湾に軍事圧力をかけるのに必要だからである。
南シナ海は、既に軍事侵攻(=侵略)して、南沙諸島をとった。ここは中国が軍事プレゼンスを発揮しやすいところである。実際資源は「共同開発」となり、見事「押し込み強盗」は成功したわけだけど、それ以上にマラッカ海峡をはじめとするところに海洋軍事プレゼンスを発揮しやすくなった。これがASEAN諸国には利いているのである。

南シナ海の周囲の国がASEAN諸国であるから、ASEAN諸国首脳にとっては、もし日中が(台湾・米国まで巻きこんで)軍事紛争がおきるとすると、自分の庭先で喧嘩となる。これは大迷惑なのである。日本と中国がどうなろうが、とにかく紛争は避けて貰いたい。そう考えると、実際にこの60年、武力侵攻していて現在でも軍事費2桁成長の中国がやっかいだ。ここは、ゴキゲンをとっておくにしくはない。

つまり、経済だけではなく、軍事背景があって、中国は大きい顔をしているのである。そこに、日本が「まぁまぁ、うちはそんなこと、気にしとりませんから~わっはっは」とやったのである。もちろん、資源も市場も比較的小さなASEANで、中国と援助合戦して影を濃くする理由はない。そこで、会議は適当に流しておいて、言いたいところだけアピールしてみせたわけだ。
もちろん、ウラでは米国と日本、台湾の良好な関係がある。ASEAN諸国から拍手がわいた背景が透けて見える。単純に「日中の関係回復を願う」という脳天気解説には失笑した。なんとナイーブな話。ハッキリいって、他人が喧嘩しようが仲良くしようが関係ないという原則にもどって事態をみたほうが間違いがない。

実は、小泉首相は、一方で外務省に「日中・日韓首脳会談は、こちらからムリに設定することはない」と指示していたという。相手が「やりたいんです」といってきたら、まあ考えましょう(笑)
首脳会談と言えば「日本が反省と謝罪」と「巨額経済援助の表明」で終わるのが通例である。こんな外交の、どこに日本の得があるのか聞きたいよ。我々の税金で動いてる首相には、我々の得になることをしてもらわなければならない。相手国の得になることばかりするなら、そんな外交はしなくていい。
その意味では、この首相の指示は得心がいくものだ。
首脳会談をしないことで、日本はカネを出さないですむから得である。逆に、首脳会談をして、なんの得があるだろうか?はっきりいって、ないんである。( ・_・;)ビックリ仰天だけど、そんな外交を今までしてきたんである。ああ、ホントにたまげた。

首脳会談ができないから問題だ、と騒いでいるのは、その巨額の経済援助でしこたま儲けていた連中だけである。ひらたく言えば、財閥と大企業だわな。我々中小企業は、大事な税金をとられるだけで、なんの得もありゃしません。そうでなくても国内でも困っている人は多いのに、世界一の外貨準備高を誇る国に(苦笑)経済支援をしなきゃならん道理はないはずだ。日本政府が、外国人よりも日本人にまずカネを使うべきなのは当然というべきである。

なんで、こんなおもしろい外交の場面を、否定的な見解でしか報道できないのか?A新聞を代表とするニホンのマスコミは、だから信用に値しないというわけで。もうあきらめているけど。

私個人としては、ASEAN会議は成功だと思う。ニホンの立場は充分に示した。ただ一人、中国を恐れない国家としての役割を、和平メッセージを送る形で示せたわけだ。今、中国になびく必要はないのだから。
まずはよしよし、と思うのである。