Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ロウアーミドルの衝撃

「ロウアーミドルの衝撃」大前研一

著者が「最後の政策提言の本」だと述べている。かつて、大前信者だった自分を総括してみようと思って読んでみた。

大前氏の提言は、いくつかのポイントに要約できる。
・中央集権制は非効率と不正の温床なので、地方自治道州制)に移行する。
・税制は、簡素な付加価値税+資産税に統一。
・民間にできることは民間に。大幅な規制緩和

ロウアーミドルというのは
年収300万円以下・・・ロウアークラス
年収300-600万円・・・ロウアーミドルクラス
年収600-1000万円・・・アッパーミドルクラス
年収1000万円以上・・・アッパークラス
と分類して、ロウアークラス+ロウアーミドルクラスが過半数を超えたと言うので、それが「日本社会を変える衝撃」だと言うわけである。単純明快、小泉支持層を「B層」と名付けた広告代理店と同レベルの分析であるよなぁ(笑)

ロウアーミドルクラスであっても、国際レベルでは充分豊かな暮らしができるはずなのに、日本人の暮らしが貧しいのは「食料品の高さ」と「住宅価格が高いこと」だとして、その対策を語る。
どのみち、石油が輸入できなくなれば、農業は壊滅するのだから、農作物は輸入でよい、食料安保もいらない、牛肉は米国が食っているので大丈夫、住宅は安い外国のツーバイフォーを輸入しろ、という具合である。そうしないと、サラリーマンの生活は豊かにならない、と。

しかし。
輸入物の野菜ばっかりが店頭にならび、共食いさせられた怨念の牛肉ステーキをくらい、首都圏近郊の農地を全部宅地にして、日本の高温多湿な夏にあわない窓の小さなツーバイフォーの住宅が並んだ町に住んで「国際レベルで豊かな生活」って言っても、ねぇ。。。

もちろん、良い提言もあるのだ。
税制改正や、何の利き目もない補助金の削減などは諸手をあげて賛成できると思う。

たぶん、大前氏の思想って、ただ徹底的に「最小のコスト」思想なのだな。同じことを実現するのに、最小の手間とコストであることが善であり、人間の幸福であるという強固な考え方。能率と効率。
経営コンサルタントとしては正解のスタンスなんだろう。
だけど、それだけじゃムリじゃないかな。
人間は、生まれたときから「経済的存在」であるだけではないので。それは、一面にしかすぎない。
むしろ、日本の過去の成功(大前氏に言わせると、あまりに上手くいった明治維新と戦後復興)の原動力は、むしろ日本人が「経済こそすべて」という考え方をもっていなかったためだと思うのだ。

というわけで。
久しぶりに読んだら、自分でも意外と冷静に是々非々でとらえることができた。
こんな人、意外と多いのではないか。

評価は☆。
大前ファンじゃなくても、規制緩和推進派は読むべきかもしれない。自分の思想の「北限」が確認できるように思う。