Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

自転車で痩せた人

「自転車で痩せた人」高千穂遥

体重80キロ、座業のSF作家という高血圧、高脂肪、痛風一直線な著者がスポーツ自転車に乗ることで、2年で24キロ痩せたという本。
それだけ。いや、ホントにそれだけ。

で。この著者が自転車に戻ったきっかけの本「自転車生活の愉しみ」(疋田智)は、超名作なのだ。なぜかというと、全編に、あの子どもの頃初めて自転車に乗れて嬉しかった「愉しみ」が溢れていて、なんともいえない切なさと、人生の愉しさを呼び起こす名著だからだ。

この本は、自転車はダイエットに良いよ~と、まあそれだけなんだよね。
本人がそうだったから、つまりそれだけ成人病対策に切実だったわけで、同じ立場にある人には、説得力があるのかもしれない。

だけど、自転車の愉しみって、私の場合はそれとは違う。
電車で通っている頃、帰宅して「自宅に帰って」帰ってきたと思った。だけど、自転車は、「お先に~」でサドルの上で、もう「自由」なのだ。
どの道を通ろうか、どこの店に寄ろうか。
ただ単に繰り返される「日常」を、そうでなく「味わい深く、せつなく、ちょっと懐かしく」変えてくれるもの、それが自転車だ。
急いで走る、ゆっくり走る、雨が降ってきて濡れながら走る。春は桜、夏のちょうちん、秋の銀杏、冬のさえざえとした月を見て走る。それは、一緒に暮らす「仲間」である。

「痩せる道具」という「目的」で自転車に、、、それを否定はしないけど。
でも、そうじゃない。自転車と暮らし、自分の暮らしを愉しむ。自転車と一緒に生活することが楽しい。そして、気がついたら「あれれ、そういえば痩せたな」というのが良いと思うがなぁ。
「目的」があって「達成」するのが、そんなに楽しいかね?「痩せたい」から「痩せました」だからどうした?と言いたくなるよ。

仕事でいえば。仕事は「良い仕事をするために」一生懸命努力する。で、気がついたら「成長」している。
最初から「成長するために」仕事をするのは、本末転倒だと思う。それは、倒立した論理だろう。

評価は☆。
私は自転車が好きなのであって、ダイエットマニアじゃないのだ。
ただ一つ、後半部分で、自転車マナーについて苦言を呈したところがあり、これは全く同意したので、そこだけ評価をした。

そうそう「自転車生活の愉しみ」(疋田智)は、ついでながら大推薦の名著だ。こちらは☆☆☆!もし、「また自転車に乗ってみようかな」と思う人は、こっちのほうを読んでみて欲しい。読んでるうちに涙目になり、読み終わったらスポーツ自転車を買いになけなしのカネをはたく。この本は、事実として人を動かす「思想本」である。取り扱い注意だ(笑)