Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アンティーク鑑定士は見やぶる

「アンティーク鑑定士は見やぶる」エミール・ジェンキンズ。

私は、どういうものか、女性の書いたミステリが苦手である。推理の過程が見えないのだ。うまく表現できないが、男性作家のミステリが一段、一段と「必然」を積み重ねて進む(それゆえ、大概の場合、最初から既に重大な手がかりは示されており、本来はもっと早い段階で真相に気付くべきであったと名探偵は慨嘆することになるのであるが)に比べて、女性の書いたミステリは「手がかり」の比重がどう決定されているのか、そして推理の過程が複数の要素でなんとなくふにゃっと決まるので、「え?!これが解決なのか。。。」となってしまうのだ。
早い話が、カタルシスがないのだ。
たぶん、私が中年独身男である原因と、密接な関係があるであろう(苦笑)。

この本もそうである。
女性アンティーク鑑定士が、救世軍のバザーの中から発見されたというティーポットを鑑定すると、非常に高価な品物だった。その救世軍バザーをやっているのが、彼女が心を寄せている牧師。
で、一方、ある像を鑑定して欲しいという依頼が来て、その象牙の像は実は型があって、、、と話が続いていくのだが。

複数の事件が並行して書かれて行く中で、相互の関連があると言えばあるのだが、ないと言えばない。時間をかけて読んだが、どうにも推理の太い骨がない。
同じうんちくものでも、前回取り上げた「グルメ探偵」とは偉い違いである。

翻訳の文章が良くないのか?とも考えた。
よくあることだが、仮にロジャー・スミス氏がいたとして、最初は「スミスさん」と呼びかけているのだが、途中でなんらかのきっかけで「ロジャー」と呼ぶようになる。これは、親しさが増したという英文化の基本であるが、日本人はそういう文化がないから、実はアタマで理解していても、わからないのである。つまり、会話文で「スミスさん」が「ロジャー」に変わったときに、地の文も「スミス氏は、、、」が「ロジャーは、、、」に変わってしまうと「あれ?誰だっけ」になってしまうのだな。
だから、こういう場合は、元の文に関係なく、すべて「ロジャー・スミスは」と書かなければいけない。そうしないと、習慣が異なる日本人には読めないのだ。
「海外小説は読みにくい」という人が多いのは、理由を聞いてみるとほとんどの人が「名前が覚えられない」という。覚えられないはずである。翻訳文の日本語での再現に終わっていて、文化の相違を考慮に入れてないからだ。その程度の翻訳者を起用する出版社の見識もどんなものかと思う。

などとぶつくさ言いつつ。

このアンティーク探偵さんの推理は全く過程が分からないし、2つの事件の相関もよくわからない。なんで、最初の事件を入れたのか不明。いや、早い話が牧師との恋愛のほうが事件より重要であるから入れたわけだけど、まったく余計でストーリーの上では生きてないと思う。
ううむ。
「グルメ探偵」によって「ハードボイルドは男の童話」だとばれたわけだが、こっちは「ハーレクインロマンスは女の童話」というレベルの作品。
ま、男が読んで面白い小説ではない。
評価は無印。

たまには、こんなハズレだって引くのだ。ああ、時間をかけて読んで損した(苦笑)。
だからこそ、アタリが出たときは楽しいのだけれどね。