Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

御社の営業がダメな理由

「御社の営業がダメな理由」藤本篤志

ビジネス本というやつは、たった自分一人のものでしかない経験を、さも世界の唯一のルールであるかのように描いてあるものが多くて、あまり好きではない。それでも、仕事柄、話題の書とかは読む。

本書は最近、書店で平積みになっているし、挑発的なタイトルが面白そうだったので読んでみた。
ええと、結論は
「営業マンの業績をあげるには、実営業時間(つまり、移動時間や日報書きを除いて、本当に見込み客に面談して居る時間)を多くすればよい」
という、2行で済む内容である。
まあ、書物というのは、だいたいそんなものかもしれないが。

このとおりにして、売上があがる会社もあるし、そうでない会社もあるはずである。
なぜかというと、売上というものは、セールス活動のみに依存しているものではないからだ。

マーケティングの視点から考えると、セールス活動というのは、マーケティング全体の一部にすぎない。早い話が「売れない商品」を一所懸命に売っても売れないわけである。もちろん、営業マンには有名な「エスキモーに冷蔵庫を売る話」というのがあって「その気になれば売れないものはない」ことになっている。この信念は、優秀な営業マンを作りはするだろうが、決して優秀な経営者を作ることはないだろう。

経営戦略においては、産業構造内での自社のポジションによって、セールス活動を強化するためには、その手前を強化しないといけない、という法則がある。
つまり、小売店の経営をするとしたら、売上を上げるのに、広告や従業員教育も必要だけど、それ以前に良い仕入れ先をもって魅力的な商品ラインナップを持たない限り、広告も教育費用もドブに捨てた金になってしまう、ということである。
では、どうしたら、良い仕入れ先を確保できるだろうか?実は、一番簡単なのは「強力な販売力」を持つことなので、話が前に戻ってしまう。堂々巡りである。この堂々巡りをどうやって突破するかが経営戦略と呼ばれるものの全てである。
「矛盾」に気づかない人は、だから経営者に向かない。問題点がわからないのに経営はできないからである。
たたき上げの経営者で、強力な販売力を武器に成長した会社が往々にして成長を止めてしまうのは、単に「偶然、有力な商材を確保した」ことに気付かないで「販売力こそ我が社の強み」と勘違いしたまま、矛盾に突き当たって解決できないからだ。問題意識が違うのである。

本書は「営業力さえあればなぁ」と思っている会社の経営陣に向けて書かれていると、前書きにある。この前書きがすべてである。
私は、この前書きの真の意図がわからない人は、たぶん本書を読んでもムダになると思う。

評価は無し。
この本の手法を突き詰めると、「売れている営業マンを残して、そうでない営業マンを切り捨てて入れ換える」ことになる。なぜそうなるか、それは本書に書いていることを、冷静に考えてみればわかるはずだ。どこの中小企業でも「今」やっていることにすぎないので、たぶん効果はないでしょうね。。。