Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

魔女の鉄槌

「魔女の鉄槌」ジェーン・S・ヒッチコック

ヒロインのビアトリスの父は、愛書家であり、古今東西稀覯本をコレクションするのが無情の楽しみという医者である。
彼女は、結婚生活に失敗し、実家に戻って、妻を失って気落ちした父のために一緒に暮らしている。彼女の落胆ぶりが、結婚生活に対する高すぎる理想にあると感じた父は、彼女に、実は自分たち夫婦も危機があったと告白する。彼女は反発する。
ところが、なんとその翌日、何者かによって父親は殺されてしまう。彼女は、父と和解する機会を永久に失ったことを悲しむ。どうも、父の殺された原因が、父が執刀した手術のお礼に貰った古書にあることに気づいた彼女は、その古書の由来を調査する。その本は「魔女の鉄槌」と呼ばれる、中世の宗教裁判で実際に使用された法律を記した書であった。。。

中世キリスト教で「宗教裁判」が頻繁に行われ、そこで「魔女」とされた多くの女性が火あぶりの刑になったことは有名である。あのジャンヌ・ダルクもそうである。しかし、その「魔女」の詳しい定義を、普通は知らない。
この「魔女の鉄槌」なる書は実在の書である。この書が定義する「魔女」とは、簡単に言ってしまうと、性欲を露わにする女性のことなのである。
なぜ、女性が性欲を露わにすることを、中世世界がそれほど嫌悪したのだろうか?それは、たぶん男性による支配の必要性と、それから「言葉に出来ないもの」に対する畏れから、おそらく生じている。
そういうことを、思わず考えてしまう内容である。

評価は☆。
題材の面白さは良いが、ミステリとして見た場合の謎解きの愉しさはない。あくまで「魔女の鉄槌」を批判するために作られたストーリーと言ってよい。
早い話が、この本はフェミニズムのための本なのである。

私は、フェミニズムを別に嫌悪していない。ただし、積極的な支持もしていない。なぜなら、フェミニズムは「もてない女」には冷たいからだ。これは、小谷野敦が指摘したことだが、男から「求められ、所有され、支配される」存在としての女、という問題のとらえ方には、どうしたって男から「悪意も受けないが、注目もされない」女の存在は脱落している。いや、男もそうだが(苦笑)「もてない」という冷厳な現実の前には、すべてが雲散霧消なのである。

そういうわけで、ま、40過ぎの独身男に言わせれば、結婚生活に失敗した女性なんて「1回は結婚した」わけで、こっちよりは「勝ち組」だと思うのですよ。1回もできないわけなんだからさ。ちくしょー。

結構感心する分析もあったりしたんだけど、私の立場では、それ以上の考察が出来ない。データ不足(笑)をひしひしと感じて、なんだかつらい読書であった。ううむ。。。