Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アダムの呪い

「アダムの呪い」ブライアン・サイクス。

昨年読んだ「イヴの7人の娘たち」の著者による続編。
イヴの次はアダムである。気になるではないか!で、まんまと編集者の手に乗って買ってしまう。なに、こういうおっちょこちょいがいなけりゃ、活字文化は成り立たないではないか(笑)

さて、内容を軽く紹介すると。
昨年「女系天皇議論」のおりに「天皇は、すべて神武以来のY遺伝子を承継しているが、女系ではそれがない」という主張があった。実は、科学的にはほぼ正しいので、Y遺伝子という奴は「組み換え」なしで、ほとんどそのまま男子に受け継がれる。(だから男系の主張が正しいのじゃなくて、純粋に伝統というか、習慣の問題だろうと思うが)
ここで、いきなりダーウィンが登場する。
ダーウィンの進化論は、よく知られた「自然選択」以外に「性選択」という主張もあって、その2つの理論が骨子である。自然選択は「適者生存」でよく知られているから省く。「性選択」というのは、わかりやすく言うと性的魅力のある者が子孫を残す、ということである。
たとえば、オオツノジカの雄は、角が大きいほど雌にもてるので、子供を残せる。クジャクの雄は、見事な羽をもつ雄ほど有利である。
オオツノジカの雄もクジャクの雄も、その角や羽が生き残るのに有利なわけはない。むしろ逆だ。なのに、「ほら、僕はこんなに余計な(!)ものをもって生きられるほどたくましいですよ」というシグナルとして雌には受け取られる。だからもてる。

これが人間になると。雄は「富」とか「権力」をもつ。それで雌を誘う。この性選択の問題点は、実はペナルティがないことなのである。

オオツノジカは、角が大きくなりすぎると、ついには生きていくのに不利になりすぎるわけで、おのずと一定のブレーキが働く。ところが、人間の雄には、そういうブレーキがない。環境破壊や戦争、貧富の格差、すべて人間の雄のY遺伝子の仕業と考えることができる。(このあたり、ドーキンスの利己的遺伝子論)

しかし、ついには破綻が来る。Y遺伝子は「組み換え」がないから、遺伝子が突然変異で傷ついたときであっても「修復」できない。他の遺伝子は、組み換えが起こることによって、傷付いても修復可能である(修復できないと、ついにはガンになったりする。高齢者のガンは、遺伝子の傷がなおらなくなった状態=寿命、と考えることもできる)男系に脈々と受け継がれるY遺伝子は、修復ができないので、代を重ねるごとに「劣化コピー」になっていく。
このままだと、人類はもちろん、すべてのY遺伝子が500万年後には死滅、すなわち「雄のいない世界」ができるだろう。。。他の遺伝子とペアになることができず、えんえんと世代を通じて受け継がれながら、傷付いて滅びていく運命のY遺伝子=男性。これぞ「アダムの呪い」である。

評価は☆☆。
こりゃ、かなり面白いと思うな。

たびたび言っているように、私は雄の生存競争に負けているわけだ。私のY遺伝子はダメなのであって、すなわち私のオヤジのY遺伝子がダメなのである。そう思って我がオヤジを見たら、、、なるほどなあ。こりゃ、納得であるよなあ(笑)

生存競争の「負け組」が、「ほら、そのうちお前達だって同じ運命じゃないか」と溜飲を下げるのに役に立つ。つまり、私にとっては「実用書」である(笑)
男の富も権力もしょせんクジャクの羽。そう思えば、なにやら楽しいじゃないか、、、なんてね。