Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

無口な男

中川発言で思い出したのだが、私は「無口」と言えば上杉景勝を思い出す。
この人、滅多に口を利かなかったそうで、たまにしゃべると家臣が畏まってきいた。
生涯、笑ったのが数回とかいう逸話も残っている。

その景勝が、珍しくしゃべったのが、徳川家康が小山会議で反転、軍を江戸に返したときだ。
退却する軍を追撃するのはたやすいとされている。家老の直江兼続は、当然「追撃」を進言した。
ところが一言「せぬ」
直江は驚き、珍しく「何故でございますか」と食い下がった。
これに対する回答は「祖法にない」ということであった。
上杉謙信は、退却する敵を一方的に追撃するような戦をしなかった、後継者たる自分もしないという意味である。
これで直江は何も言えず、上杉は動かなかった。

後年、この追撃をしなかったことで、上杉家は取りつぶされることなく、米沢への転封で済んだのだと言われた。

しかし、である。

もし、上杉が一気に徳川の背後をついたらどうであろうか?
迎撃するのは結城秀康で、大激戦になったであろうが、上杉が動いたなら水戸の佐竹も動いたはずである。そうなれば、徳川は敗れた可能性が大いにある。
西国の石田がどう動いたかわからないし、九州から黒田が攻め上る動きになったかもしれない。上杉が天下をとったか、あるいは伊達が漁夫の利を占めたかもしれない。
いずれにしても天下大乱になった可能性はあるわけで、景勝の無口が覇権の帰趨を決めたとも言えるのじゃないだろうか。

口数が少ない人間が、たまに口を開くと、議論の余地無く物事が決まってしまうという例だろうと思う。
それがいいかどうかは分からないのだけど。
「説明責任」で煩い昨今の人間には、わからない話かもしれないなぁ。