Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

デス・コレクターズ

「デス・コレクターズ」ジャック・カーリィ。

30年前に、法廷でヘクスキャンプというカルト主催者が、死刑判決を受けた直後に傍聴人の女(信徒の一人)に射殺される。女も拳銃で自殺。ヘクスキャンプを逮捕し、裁判に立ち会っていたウィロウ刑事は「アートを追え」という謎の言葉を瀕死のヘクスキャンプから聴く。

ところは現代に変わる。ライダー刑事(主人公)とノーチラス刑事の二人は、精神異常犯罪者の逮捕で年間最優秀刑事となって新聞に報道される。そんな二人のところに、殺人事件の知らせが入る。なんと、死体は目にロウソクが立てられ、見るも凄惨な有様。さっそくこの事件を追い始めた二人に「アートはこなかったか?」という謎の電話が入る。実は、確かにアート(絵画)の一部らしきものが、被害者の周辺から発見されていた。電話の主はかつてのウィロウ元刑事だった。その事件を捜査するうちに、なんと地下でシリアルキラー(連続殺人者)たちの遺留品が高値でオークション対象となっており、昔ヘクスキャンプが残した絵画が人気となっているらしいことに気づく。被害者が殺された理由が最期に明らかになって。。。


非常によくできたサイコサスペンス小説。ストーリーといい、人物の造形といい、さりげなくちりばめられた伏線といい、実に良くできているとしかいいようがない。しかも、ところどころに出てくる偏執狂的な犯罪者達の行動は、実にリアルな(実物を見たことはないのだけど、いかにもという気にさせるという意味で)ものである。
こういう「よく書けた小説」は、なかなか日本人作家には書けないなあ。

評価は☆。
ハードボイルドファン、ミステリファン、サイコサスペンスものが好きな人。そのどれにも受けるだろう作品という意味で、上質だし、このまま映画化できるほど見事なシナリオである。

この作品のなかには、シリアルキラー(連続殺人者)の遺留品を愛好する人々が出てきて、大きな鍵を握っているのだが、実はそういう人々は実際にいて、ネットでかなり高値でそれらの品物が落札されるのだそうだ。サムの息子のなんたら、だとか。
日本では、まだそういうものはオークションに出ていないようだ。幸いというべきか。そんなものに高値がつく社会というのも、どうかと思ってしまう。
岸田秀流の「本能が壊れた動物」という人間の定義に従えば、そんなこともあるのかもしれないけど。現実には、殺人を犯してしまう人々は少数といえども必ずいるわけで、だとすると単純に「壊れた」のではないのじゃないか、と思ったりする。むしろ、それが人間で、だから色々な仕組みが必要で、それ自体が人間として「普通」なのであって「壊れて」いるわけじゃない。
本能が壊れている存在が人間なら、むしろ壊れていない人は「非人間的」なわけだから、「壊れている」という定義自体が揺らぐだろうと思うのである。

ま、どうでもいいことですわなあ。私は、今のところ、人殺しをする気も、オークションで遺留品を落札する気もない。やれやれ、と胸をなで下ろすのである。