Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

鬼・雷神・陰陽師

「鬼・雷神・陰陽師」福井栄一。

本書は、安陪晴明、菅原道真渡辺綱の3人について、特に歌舞伎や狂言、小唄などの古典芸能に現れた伝説を紹介した書である。

実は、本書を手に取ったのは、左右問題を考えたのがきっかけである。といっても、イデオロギーのことではない。左右というて、すぐに「イデオロギー」を思うのは、悪しき現代人の性ですぞ(笑)

昔の「左大臣」「右大臣」では、左大臣が偉い。ところが、ひな祭りのお内裏様とお雛様では、左側にお雛様を座らせるケースも多くなる。
左官は、建築業の太子信仰のなかで官位を与えられたことになっており、大工は「右官」で大工頭の語源になっているはずだが、おかしなことに左官の官位がない。大工が右なら、上位の左官に官位がないのは妙である。
さらに、「左遷」は降格。
商売は「左前」になるとつぶれる。
「左道」は陰陽道のことで、黒魔術の手妻である、、、やっとたどり着いた(苦笑)
ついでに八つ当たりしておけば、左のヒラメのほうがカレイよりも高級魚であるぞ。

ま、どうでもいいことですなあ。

で、本書だけど、非常にオモシロイ。なかでも、菅原道真(天神様)の段が秀逸だと思う。
雷がなったとき「くわばらくわばら」と唱えるのは、道真公の所領が「桑原」だったからだそうで、「おいおい、ここは桑原ですよ」と偽電(!)を打っているようなもんなのだなあ。

評価は☆☆。楽しい噺が満載、雨の連休の中で読むには最適の本だった。

最後に、にやりと笑った話を。
右大臣菅原道真は、左大臣藤原時平によって大宰府に流されたわけですが。。。
時は下って、江戸時代の質屋である。おやじが蔵の掃除していると、立派な天神様の掛け軸の絵が話し出した。「おい、主人。そこもとは、このワシを質入したやつを知りおろうの」「ははあ、かどの藤原さんでございます」「ウム、ならば、今度あったときに、元金はともかく利上げなとせよと伝えよ」「ははあ、かしこまりました。。。ときに天神様、天神様ともあろうお方が、何ゆえこのような細かい金の話などされるのでございますか?」「ウウム、そうせねば、また流されそうじゃ。。。」