Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

長い腕

「長い腕」川崎草志。

第21回横溝正史大賞受賞作。

ヒロインの島汐路は二十台後半の独身女性で、2年おきに「リセット」するため転職を繰り返している。彼女は、さいたま新都心のゲームソフト会社で、美術出身の才能を生かしてコンピュータグラフィックスを描いている。
退職届けを出してからのこと。彼女のゲームソフト会社の同僚女性二人が屋上から身投げ。その事件を調べているうちに、彼女は自分の出身地、愛媛県の早瀬村での殺人事件と関連があるのではないかと考え、数年ぶりに帰郷することにした。
彼女の故郷の早瀬村は、どういうわけか、殺人事件が異様に多い。この原因を調べている最中、出身中学の男子中学生から「殺人事件を起こした中学生はすでに死んでいる」というメールを受け取る。彼を詰問していくうち、彼の主張には裏づけがないことがわかるが、事件を背後から操っていた謎のインターネット上の存在に気づく。その存在を調べていく一方、彼女の姉にしつこく言い寄る村の男が出現、ストーカーまがいのこの男を排除するべく、彼女は昔の勤務先の上司石丸に救援を求める。
そこから、思わぬ真相が明らかになって。。。

これが処女作だとしたら、作者はなかなかのストーリーテラーである。後半、やたら登場人物がころころ死ぬ(殺される)のが気に入らないが。。。

評価は☆。世評は高いようであるが、「占星術殺人事件」でデビューした島田荘司ほどじゃないと思うな。
「ゆがんだ建物が生み出す犯罪者」というアイディアも、たとえば有栖川有栖の「館シリーズ」や篠田真由美の「桜井京介シリーズ」でおなじみ。あ、森博嗣の登場人物も工学部建築学科である。なぜか、ミステリの登場人物は建築関連が好きなのだな。

本書のコンピュータ知識はおおむね正確だが、ちょっと気になる点がある。DOSで新規フォーマットされたハードディスクは、確かにデータ読み込みが困難である。だけど、この作品の執筆年を考えたら、もうDOSでフォーマットできるようなハードディスクはめったにないのじゃないかな?ましてや、ソフトウェア会社だ。そんな太古のディスクは使ってないんじゃないか?と思う。余計なことではあるから、小説のストーリーには関係ないけどね。ま、ちょっと気になるだけである。