Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

茨の道

最近、ちょっと忙しいのですが、参院選の総括を書きつけておきます。

小泉改革の正体が「自民党の都市政党化」である、ということの意味を説明しておきます。

今回の東京選挙区は、保坂さんぞう氏が落選。丸川珠代氏が当選です。これは象徴的です。
保坂氏の選挙組織は、自民党都連です。従来型の組織選挙なんです。
これに対して丸川氏は「まったくの空中戦」でした。つまり、丸川氏には「基礎票自民党の組織票がない」のです。その中で戦わざるを得なかった。その結果、保坂氏が落選で、丸川氏が当選です。
いいかえれば「組織票の保坂氏は議席がもらえず、浮動票の丸川氏が当選した」ということです。
大都市で、浮動票頼みに戦ったほうが議席がとれる。これ、今の自民党の現実です。もっとも、東京の結果で言えば、公明とのバーターがあった可能性もある。それも含めて、政党が動かせない浮動票をアテに戦うのが今の自民なのですね。

なんでそうなったかといえば、選挙制度改革と、小泉改革の結果がもたらしたものなんです。
今、日本の人口の半数以上が、大都市圏に住んでいます。都市部と農村の収入差まで考えれば、税収の開きはさらに大きいはずです。
田中派以来の経世会は、地方の土建屋を集票組織にしていたのですが、これは公共工事の見返りがあったからです。言い換えれば「中央でカネを集め、地方に配分する」のが自民党の仕事だったわけです。

選挙制度改革で「カネのかからない選挙」になると言われました。なぜ、選挙区が小さいと、カネがかからなくなるのか?もちろん、ポスターや人員が少なくて済むからですが、そのほかにも理由があります。「見返り」も少なくて済む、簡単にいえば議員が扱う利権が小さくなるからです。

その分、大きく利権を伸ばしたのは「官僚」でした。議員の扱う範囲が小さくなり、中央官庁の裁量範囲が逆に増える結果になったのです。その結果、天下り特殊法人ばかりが、そこここに跋扈する有様となりました。

そこで小泉改革です。小泉さんは、横須賀出身で二世議員、つまり「たたきあげ」で官僚に阿って利権の分け前にあずかる必要がない。横須賀でも「何もしない」で有名です。今更、横須賀に高速道路はないわけですから。で、その小泉改革の中身は、中央官庁の利権そのものを小さくする、行政改革地方分権がセットだということです。選挙に強いというのは、実はカネがなくても選挙に勝つことを意味します。カネがなくても勝てるなら、官僚と戦えるからです。

今回の参院選の小沢さんのマニフェストは「年金の全額支給」「子育て支援」「農業の個別所得補償制度」です。これ、どれが効いたでしょう?ハッキリ言いますが「年金」なんか目くらましです。実際は3番目の「農業の個別補償」という名の「バラマキ手形」が効いたのです。だから、地方の一人区で勝った。農家は、かつての減反補償のときに、ばらまかれるカネの味を覚えています。

しかし、実際には、巨額の農業保証金と関税をかけて、国内の農家がどれだけ強くなったか?はご覧の通りです。
で、そのカネは、みんな都市住民が払ったものです。
その都市住民は、がたがたの渋滞だらけの高速道路、いっこうに改善されない満員通勤、高い地価物価にあえいでいるのです。苦境にたっているのは、地方だけではありません。

自民党は「都市型政党」に舵をきりました。しかし、都市は一人区ではありません。5人を自民が全部とることは不可能です。地方は一人区です。一人区を5つ集めて中選挙区にしても、自民も民主も2つ以上はとれません。
自民は地方で「保守王国」を作ろうとして選挙制度を改革し、自ら掘った陥穽に落ちてしまったのです。

で、今後です。
これからの日本は「都市対地方」になります。ただ、今のままだと、地方をとったほうが短期的に選挙に勝てますから、自民党の出方次第では、都市部の政党がなくなってしまうでしょう。

都市政党を、戦える政党として残せるかどうか?一票の格差を縮めて、都市に議席を配分できるかどうか?その上で、都市と地方の死票差を埋められるかどうか。
これからの問題だろうと思います。

そして、政界再編が起こるとしたら、それは「右対左」のようなイデオロギーではなく「都市対地方」の現実的な配分が問題になる、それが対立軸だろうと思いますね。