Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

鉄槌

「鉄槌」ポール・リンゼイ。

主人公のキンケイドは、FBI捜査官である。女房子供に逃げられて離婚、粗末なモーテルに住み、飲酒運転をやったせいで公用車まで取り上げられ、自家用の「ギネス記録並み」のおんぼろバンに乗っている。タバスコを入れないと飲めないようなひどい味の安酒を飲みつつ、B・Cという雑種の捨て犬を飼い、ポーカーのばくちに手を出して、負け分を払うためにニセ夜間金庫詐欺にまで手を出している。一言で、堕落しきった男である。
そんなある日、東欧移民の技術者が、自分の娘の誘拐事件をFBIがまともに捜査してくれないのを怒り、爆弾を刑務所にしかける。娘の誘拐犯人を捜してくれたら、爆弾の爆破装置を解除するというのだ。
この犯人の捜査で、キンケイドは黒人捜査官オールトンとコンビを組む。オールトンはキンケイドとは正反対で、黒人差別を見返すべく、真面目に努力を積み重ねてきたが、ガンにむしばまれて片足を切断してしまった。しかし、義足をつけながら「身障者年金の世話にならない」と宣言し、抗ガン剤を飲みながら現場に復帰したという強者である。
この二人は、見事に3年前の娘の誘拐事件を解決し、かつ爆弾犯をもとらえる。実は、キンケイドは、捜査に関しては素晴らしい能力を持っていた。
ところが、一見解決したかに見えた誘拐事件であるが、ある奇妙な点にキンケイドは気づく。さらに真犯人を追って捜査を継続する二人に、犯人が挑戦してくる。なんと、オールトンの娘が誘拐されてしまうのだ。そこから連続殺人が発生する。
キンケイドは相棒オールトンの娘の救出に向かうが、自分の夜間金庫詐欺がばれてしまい、処分を待つ身となる。しかし、自分が逮捕されてはオールトンの娘を助けることができない。その逮捕を待って貰いながら、ついに真犯人と対決する。。。

評価は☆☆☆である。
これは素晴らしい作品である。正反対のキンケイドとオールトンが、互いに理解できないものを感じつつ、しかしお互いを認め合い、ついに尊敬し合う仲間になる。
そしてラスト。
新幹線の中で読み終えたとき、不覚にも涙腺がゆるんでしまい、とにかくあわてた。
こういう作品があるから、海外ミステリはやめられないのだなぁ。

私は、この作品のキンケイドが好きである。ついでに、キンケイドが住んでいたモーテルで前の家族に捨てられた犬、B・Cも好きである。この小説には、「ろくでなし」ばかり登場しているのだが、そのろくでなし達が、なんと魅力的で、しかも立派であることか。

できれば、なるべく安酒をちびちびと飲みつつ、1ページ1ページを、じっくり読み進めていって欲しい。この本が、極上の相手になってくれることは間違いない。

秋の読書には、最高の1冊だと思う。大推薦!!