Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

円高はたして

アメリカがサブプライムでこけた影響が拡大し、円高になって、日本の大企業に大きな減益要因になると懸念されている。
一方、町村官房長官は、「基本的に円が強くなることは、長期的にはプラスである」と述べた。

私は、この町村長官説に賛成である。

まず、今の為替相場であるが、バブル時代はさておいても、2002年頃の水準で1ドル110円台でやっていたのだから、大きな問題であるとは言えない。
輸出産業のトヨタやホンダが円高で何百億の損が出る、というような報道がされているが、当然彼らは為替ヘッジをしているはずで、そこまで簡単に影響を受けるはずもない。

国富の消失という観点から言えば、株式相場の下落は確かに痛い。しかし、為替だって、1ドル110円が130円まで安くなっていたのだから、実は膨大な国富が消失していたはずなのである。
言うまでもなく円安は輸出ドライブに有利だが、その結果をみると、東京本社の輸出企業ばかりが好業績であり、地方の地盤沈下は止まらない。輸出企業は為替リスクのヘッジと貿易摩擦の回避のために、積極的に生産拠点の海外進出を進めたために、これら輸出企業の業績がよくなっても地方及び中小企業にはなんら恩恵がなく、むしろ格差拡大の傾向に拍車をかけるだけの結果になっている。

このような状況で円安が進めば、当然に海外から輸入する資源の高騰につながるために、地方や中小企業などの輸出産業に関係ない経済基盤しかもたないところは「コスト高」の「売上不振(輸出産業が利益を出しても内需には反映しないから)」のスタグフレーションに苦しむことになる。
実際には需要が盛り上がっていないので、実質的に物価はデフレ基調にあるのに、通貨だけが弱くては実質金利が高い上に賃金が上がらない循環に陥る。もっとも忌むべき状態である。
日本の通貨が弱いのは言うまでもないが巨額の財政赤字に起因する国債の乱発があり、これを改善するために構造改革が避けて通れない結論となる。

小泉改革が格差拡大を招いた、間違いである」といって何でもかんでも「構造改革が悪い」という論評は、まったく逆の分析であり、私は理解に苦しんでいる。どういう経済理論なのかと思う。

現在の円高だが、実際の為替水準を見るとむしろ「ドル安」ドルの一人負けで、円が強くなったわけではない。
このままドルの沈没が続くと、円も人民元も間違いなく下落に転じる。所詮、円はドルに(間接的に人民元を経由して)依存している構造だからだ。
従って、当面通貨のユーロへのシフトが目立つことになるだろう。

しかし、ユーロも問題がある。言うまでもないが、ユーロ市場はドルよりも遙かに小さい。そこに、巨額マネーが流入したらどうなるか。
「世界同時」株安、通貨信用自体の下落につながる。(金が上がるわけだが。。。)

本当の意味での円高ならば、それは歓迎してもよい。ドル独歩安は、しかし、たいへん危険なサインだろう。日銀は、来年2月か3月には再び利上げに踏み切るだろうが、果たしてそういうタイミングになるのか?慎重に考える必要が出てきたのではないかと危惧する。

蛇足:

ついでに言えば、ドル防衛はつまるところ、ドルを出せば石油が買えるというのが基本になっている。石油が買えない通貨は、国際市場で意味がない。アメリカが守ろうとしているのは国ではなくてドルである、ということがわかる。では、日本はどうか?
日本が食える市場がアメリカしかない、つまり日本はドルしか稼げないのだ。そうでなければ、この国の高度生産品を誰が買ってくれるのだろう。
もうひとつ言えば、なんと中国も同じであって、大量の輸出品を買ってくれる市場がアメリカしかない。中国共産党が政権維持をするためには、豊かさが必要であり、そのためにアメリカを必要とする状況になった。日中ともにアメリカ頼みというのは、実は戦前の構造と同じなのであり、日本にとっては国防上は危機感を持たなければいけない事態である。日本に対して「アメリカと話をつける」ことが可能になる状況だからだ。孤立化の危険はここから出てくる話で、根本的に日米関係自体がもはや楽観できる状況ではなくなった、という深刻な分析に起因する。日本は、すでにアメリカにとって唯一の極東拠点の地位を失った、という認識は間違ったものではない。
インド洋の補給に対する世論の風向きがじわりと変わってきたのは、深いところで我々の生活とつながっているらしい、と皆が気づきはじめたからだろう。国際貢献がどうとかいうレベルでなく、もっと深いところで、冷静に算を立てなければならぬ難局だとつくづく思うのである。