Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ブルーギル

天皇陛下が「自分が50年前に米国から持ち帰ったブルーギルに心を痛めている」と述べられた。
ブルーギルが、あちこちの湖沼で増えた結果、在来魚種に影響が出ているのを懸念されてのご発言だろうと思う。

ブルーギルは、日本の魚にはない習性で、親魚が卵や稚魚を守る、ということがある。他の魚がくると追っ払う。その上、汚染にも強い。繁栄するわけである。

ブルーギルが日本に移入された時期は、50年近く前で、敗戦によって日本人が皆食うや食わずの生活をしていた。だから、ブルーギルが有望なタンパク源だと思われたのである。このあたりの経緯は、アメリカザリガニとそっくりである。

そういう意味では、見事に日本の環境に適応したブルーギルであるが、最大の誤算は、日本育ちのブルーギルが不味かったことである。アメリカでは、ブルーギルはフライパンで焼くかムニエルにして食べる。ところが、日本の湖沼で育ったブルーギルは、あまり大きくならないし、独特の臭みがあって、誰も食べない魚になってしまった。
食べられないし、観賞魚にもならない、釣ると面白いように釣れるのだが、あまりに簡単すぎて釣りの対象にもならないので、文字通り「煮ても焼いても食えない」魚になってしまったわけだ。

全国各地でブルーギルの駆除が行われているが、相手はすごい繁殖力をもっているので、なかなかうまくいかない。「税金の無駄遣いで、業者の利権になるだけだから、やめてしまえ」という意見もある。このままうまくいかないと、そういう意見が正しかったことになるだろうと思う。結果から物事を見て「正しかった」「間違っていた」と論評することほど、気楽な話はないんだからね。

「お前は外国生まれだから、死んでしまえ」ではファシズムじゃないか、と駆除活動を批判する声もある。しかし、人権問題と同じロジックを魚に応用することはムリがある。「人間は食べるために動物を殺すのに、どうして人間を殺しちゃいけないの」という問いと同じで、文化や宗教、そう感じる人の感性が問題の焦点なので、「魚権」と「人権」を同じに扱えという議論は賛同を得られないだろう。

ブルーギルも、きっとアメリカザリガニウシガエルと同じように、我が国に居座って、結局は「仕方ねえなあ」ということで認知されるようになるんだろうか。

もしそうなら、もうちょっと美味い魚になってくれないかな、と思うのである。釣って食べるぶんには、何も問題はないわけなんだから。