Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

不都合な科学的真実

「超不都合な科学的真実」ケイ・ミズモリ。

副題は「もうからない重要な発見はすべてつぶされる」である。
いやー、今年もいよいよ師走にはいるわけで、今年の「と本」(笑)ナンバーワンを選考しなければいけない時期にさしかかっているわけで、そこに有力な新星が登場というわけである。

冒頭は、「すでに、ガンのきわめて有効な治療方法が発見されているにもかかわらず、大手製薬会社、医療業界がこれをつぶした」という告発レポート(!)からはじまる。
思わず「ふうむ」とうなってしまう、なかなか良いスタートである。
しかし、そこからいきなり馬脚は現れるのである。
マラリア患者にはガンは発生しない」「小腸にはガンは発生しない」、、、ううむ。。。
事実は、小腸にだってガンは発生するし(たしかに少ないけど)マラリア患者もガンに罹患する。マラリアは、今に至るも、実はもっとも多くの人が亡くなる病気である。
一方、ガンは確かに日本人の死亡原因一位なんだけど、その発生は年齢に比例する。つまり、基本的に高齢者に多い病気なのである。
早い話が、マラリア患者にガンが少ないのは、ガンに罹患するほど長生き出来ないからだ、という簡単な説明ができてしまうのだな。
そのほかの説明としては、ガン細胞は39度で死んでしまうので(温熱療法が有効なのはそのためである)たびたび高熱を出すマラリア患者は確かにガン細胞を減らすことができていると考えられる。
もっとも、そんな状態を繰り返していたら、ガンにかかる以前にマラリアで死亡してしまうことに変わりないのだが(苦笑)

その後「定番」のフリーエネルギーの話がでる。電気自動車が普及しないのは大手自動車会社の陰謀だ、ブッシュは石油会社の関係者だから、などというもっともらしい話が枕になって、ついでに「水エンジン」の話が出る。。。
あのなぁ。。。お前はドクター中松か(笑)
熱力学の第二法則に背くエンジンなんか出来ないって。

ま、だいたいこの調子なので、とても楽しく笑うことが出来る。
☆だな。あまり真面目に考えずに、洒落のわかる大人にお勧めしたい。酒を飲みながら読むとなお良い。

ところで、科学史において、この本に指摘されているような事実がなかったわけじゃない。有名なところでは、蛍光灯は発明後の長い間、電力会社によって封印されている。当時は電力といえば照明に使うくらいしか、使い途がなかった。
だから、白熱電球が蛍光灯に変わると、電気が売れなくなると考えられたのだった。
本書にもある話だが、米国の大手自動車メーカーは、トロリーバス路面電車)の会社を買い取って倒産させるという手段によって、自動車が売れるようにした。
従って、大手資本によって、商品なりサービスなりが売れるように、新発明を押さえるということはあったといえる。

だけど、それと科学的真実とは、また別のものである。
イデオロギーによって、科学的真実は変わらない。ソ連共産主義イデオロギーに基づいて「獲得形質の遺伝」説を唱えたが、ついに証明できなかった。思想で科学は変わらない。当たり前のことである。
そういうのを「味噌もくそも一緒」と昔の日本人は笑った。

某ベストセラーをそのままパクったタイトルだもんなあ。売らんかな、はこの本のダシに使われた大手資本の話じゃなくて「お前だー!」(笑)
そう思うと、またまた笑いがこみ上げてくるのである。へへへ。