Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

セックスボランティア


3年ほど前に話題になっていた本で、最近文庫化されたようだ。私が読んだのは「積ん読」していた単行本である。(そういう境遇に甘んじている私の本よ、すまん)

内容は、一口で言えば「障害者の性」に関するレポート、といったところ。問題提起、といえばいいか。
冒頭は、高齢の障害者男性が、お金を貯めてソープランドに行くときには、酸素吸入器をはずす、という話である。もちろん、生命の危険があるわけですが、まあ、これだけは別、というわけなんですな(苦笑)。ふんふん。
それから、障害者の自慰介助の話。それにまつわって、結局「セックスボランティア」なる存在が出てきている、というお話。もちろん、経済行為として「障害者専門の風俗業」とか「障害者割引のある風俗業」「その産業で働く女性」の話もでてくる。
先進国(!?)のオランダの性介助組織の話とか、「ボランティアよりはお金で割りきれるほうが良い」という障害者の話(同情、になるとイヤだわねえ)とか、障害があっても結婚して楽しくやっていらっしゃる夫婦のお話とか。
まあ、基本的に「健常者が必要としているものは、障害者だって必要」だという、ごく当然の話にいきつくのであろうが。。。

読み終わって、正直にいえば違和感を感じた。その違和感の原因をたどると、主に以下の2点となる。

第1点目。
最近、「五体不満足」で有名な乙武氏に待望の赤ちゃんが生まれたそうで、つまり障害者だろうとなんだろうと立派に結婚し、家庭を営む人はいる。
一方、私のように、40過ぎて独身、さっぱりあきませんわ、という人間もいる。ずばり「もてない男」である。
「もてない」原因は、容姿(キモメン)だとか経済力だとか知力だとか体力だとかBMI値だとかセンスがないとか環境がわるいとか、、、まあ無数にあるだろう。しかし、現実に乙武氏よりはるかに「もてない」男が世の中にあまたいる、それは否定のしようがない事実だろう。
そして、それらの要因は、健常者の場合は「本人の努力が足りない」で終わりである。なぜなら「恋愛は、誰でもがんばれば出来る」ことになっているし、一方で「仮に、恋愛で弱者であっても、それを社会的弱者とはいわない」ことになっているからである。
そうであれば、論理の必然として
「障害者」が「恋愛における弱者である」として、その「弱者」だけは救済しなければならない論理はなぜか?
となる。
たとえば、経済力において、障害があって働けない場合は、これは(不十分であるけれども)保護の対象となる。
これは、健常者においても、同じく原因はともあれ貧窮していれば(不十分であるけれども)保護の対象となる。
ところが、恋愛は、「障害者の場合は救済すべき対象」だけど「健常者の場合は自己責任でおしまい」なのだ。これはなぜか?

もっといえば、「もてない男」のための「セックスボランティア」はなぜ存在しないのか?
あるいは、生活保護を受けている人が、そのお金を使って風俗業に行くことが、是認されるべきか否か?

そもそも「もてない」という原因の中には、自己の努力をいかにしても克服できない課題もあり得るわけで、なぜ彼を「障害者」と呼ばないのか?

第2点目。
もしも「性的弱者」に対する「ボランティア」が首肯されるとしたら、「いわゆる従軍慰安婦(当時はそんな言葉がない)」はどうなんだ?ということである。
つまり、戦地に招集された兵士達は、国家の手によって、なかば強制的に「性的に不自由な環境」に置かれてしまう。
もちろん、戦地においてもセックスビジネスは可能であるが、危険負担の原則から、その価格は高騰して、一部の富める者にしかゆきわたらないであろう。
もしも「性的サービスが、性の弱者においては当然に認められる存在」であるとするならば、それを提供する人間も「当然に認められる」ことになる。そうでなくてはおかしな話である。
すると、戦地において、強制的に「性的弱者」の立場に置かれたものに対して政府が「補償」を行うことは、悪でもなんでもない論理となるであろう。
そこにおいて問題なのは「職業選択の自由」のみである。労働の種類として醜業であるという見解は成立しないはずであるし、してはならない。
あるいはさらに刺激的な話として「ボランティアを強制された」ことは、どこまで悪か。。。

評価は☆。様々な思考の端緒として。しかし、一方で「もてない男」の疑問には、何も答えてくれないスッカラカンの内容であることをうらんで(苦笑)

まあ、何をほざいたところで。
「ぐちゃぐちゃ言ってないで、自助努力しろ」と言われるのがオチなわけでしょうなぁ。そういうことを「弱者切り捨ての小泉改革を批判」したりする人が、平然と言うのでしょうなあ。もちろん、本人は何の矛盾も感じていないわけで(苦笑)。
幸せって、そういうことかもしれませんね。