Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

撤退も策のうち

新銀行東京についてであるが、私はいまや撤退のときだと考えている。
3年で1000億円の自己資本を食いつぶすのは、やはり尋常ではない。
原因は「放漫経営」だとか「情実融資」だとか、あるいは大手銀の不良債権処理が進んで中小企業融資の市場が食われたとも言う。
もちろん、それらはそれなりに、当たってはいるだろう。
しかし、思うに、現下の状況では、そもそも政府出資による新銀行という会社自体の経営がうまく行かないのではないか、と思うのである。平清盛のごとく、沈む夕日を無理矢理に中天にもどすようなことはできないのである。

今や、中小企業がどんどん倒産する時代である。ご存じの通り、日本経済全体を見るならば、一部の大手輸出産業しか儲かっていない。
それで、中小企業対象に、融資をする会社をつくった。
しかしながら、沈み行く舟に、多少のカネを投じたからといって、立ち直るはずもない。発展途上国のキャッチアップを受ける立場で、多くの中小企業が依存する国内市場はデフレと円安ですっかり痛んでいる。
東京都のGDPは確かに80兆円あり、韓国に匹敵するが、韓国が世界経済に挑戦することなどおぼつかないように、東京都がいくらがんばっても、経済の流れは変えられないだろう。

中小企業融資に回す前提で預金を集めたから、調達金利が高い。だから、優良な大手に貸し付けをしようとしても無理である。一方、高利のカネを借りる中小企業は、確実に沈む方である。なにしろ、実質デフレ経済下では「未来のカネ」のほうが価値が高い。その上に、金利が高いのだから、そんな金を借りれば確実に業績悪化する。
そもそも、市場が難しすぎるのではないだろうか。

公的機関の役割で思い出すのは、小渕内閣時代に出動した中小企業安定化融資である。実際は、信用保証協会の保証を行うという方法だった。この保証は、優良な貸付先を金融機関が先取りし、リスクの高い案件を政府保証に回して金融機関がさらに儲けるという結果になった。
懸念通り、政府保証案件は多く不良化している。国民の税金をつかって金融機関に儲けさせたという批判は免れない。

ならば、というので、利潤が上がったら都民に還元すればいい、で始まったのが新銀行である。しかし、である。
そもそも、斜陽化する中小企業に貸し出そうというのだから、金利は高くなる。昔のようにインフレ経済であれば、それでも金利の実質負担は低くて済むが、今は逆である。中小企業の市場は収縮が進み、それでなくても重い金利負担がさらに重くなる。
結果、こげつきの多発。
こりゃ、新しい銀行の経営なんて、とっても無理だと思うのである。

仮に、損をしてでも、公的使命として都の中小企業を支援するべきだ、という考えはあるのかもしれない。しかし、それにしても、そのために450名の行員を雇い、3年で1000億円をすってしまうのは、効率が悪すぎる。

難しい判断だと思うが、傷をさらに深くするまでに、さっさと損切りするのも、一つの判断だろうと思うのだが。