Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

必勝の策

夢枕のことである。
「これ、これ、久しいのう」と声がする。
「あ!老師様」私は、すっかり慌てて、ただちにがば、と夢の中で起き上がり(笑)平伏した。
私「老師様。お久しぶりでございます」
師「うむ。息災のようで、何よりじゃ。今日は格別の用はないが、たまたま散歩がてらに寄ってみたのじゃ」
私「はは。光栄でございます。ただちに茶など入れますゆえ、しばしお待ちを」
師「うむ、すまぬの。して、俗世の様子はどうじゃ?」
私「はあ、例によって、隣国が運動会がらみで騒ぎのもとになっております」師「予定通り正常運転中というべきじゃ」
私「さようでございます。あと、山口補選で、自民が惨敗しました」師「もともと勝てる戦でもないとは思うが、策が無いのう」
私「やはり、ガソリンに後期高齢者医療制度もありましたからなあ。今回は、どうにも与党不利で致し方ないのでは、と」
私の発言に師は笑った。
師「あい変わらず、お前は不肖じゃのう。。。まず、戦に勝つにはどうすれば良いか、ようく考えてみよ」
私「は?!ええと、、、敵を知り、己を知ることでございます。まずは、それが大事かと」
師「うむ、阿呆でもそれなりに経は覚えるとみゆる。しからば、これを見よ」
http://www.ipss.go.jp/syoushika/seisaku/html/111a2.htm
私「はああ。人口ピラミッドですか。左側は2005年、右側は2055年。これじゃあピラミッドという形にはなりませんね」
師「さようじゃ。そもそも、ピラミッドという名前自体ふさわしくないの。人口ツボ、だとか人口扇だとか改称したほうが良いだろう。左側の2005年で、上の飛び出た部分が団塊の世代なのじゃが、現在はもう5年経っているのだから、ピラミッドをすべて一段ずらして見るべきじゃの。2055年は、少子高齢化の極じゃわな。現在、ここに向かって驀進中じゃ(笑)」
私「なるほど、、、ええと、2005年では団塊の世代が突出してますが、今だとちょうどずばり60~65歳になりますね」
師「その通り。つまり、60歳定年であれば、年金生活デビューじゃの。ここで、いきなり年金から保険料を天引きと言われりゃ、そりゃ反対を起こすに決まっておるわのう」
私「それはそうですが、逆にいえば、この人たちの医療費を考えると大変ではないでしょうか」
師「ふむ。だいたい、今までの医療費の1/3が75歳以上に使われておるのじゃが、これを65歳以上に引き直すと、おそらく過半近いのではないかな。その基礎となる人口ピラミッドがこうなれば、医療費はさらに鰻登りじゃろうな」
私「それで、慌てて医療制度改革をしたわけでしょうけど。あまりにもギリギリのタイミングで」
師「裏目が出た、ということじゃの。もう一度ピラミッドを見よ。実は、20代~30代の投票率は、だいたい30%台、それも前半と言われておる。2005年で、65歳以上は人口の20%を超えているが、もはや25%突破も時間の問題じゃ。世界一の高齢化じゃからの。人口と投票率を考え合わせれば、勝てる道理がなかろう。裏目というより、ただの愚かもしれんの」
私「しかし、老師様。そこをなんとか。与党に必勝の策はないものでしょうか?」
師「なに、簡単じゃ。次の3つの施策を発表し、解散総選挙に打って出ればよいのじゃ。
一つ、老人医療費は全額無料にする。
一つ、消えた年金問題解消のため、個人の申し出に従って全額支給とする。
一つ、介護保険制度を大幅に拡充、支給額を倍増する。
これで、大勝間違いなしじゃろう。そうでなければ、野党に転落してしまうからの」
私「しかし、老師。それでは財源はどうします?」
師はきっぱりとおっしゃった。「ない」
「はあ?!そ、それでは、無責任きわまりないのでは?!」
老師は、にんまりと笑った。
師「なに、心配いらぬわ。赤字国債を大増発すれば、当座はなんとかなるじゃろ。もちろん、世界の失望と嘲笑の的となり、円は際限なく下落するじゃろうがな。FXをやっている主婦連中も、どうナントカのひとつ覚えの円売りポジションしか取らぬわけじゃろうし、歓迎するじゃろう」
私「し、しかし。それでは、日本の未来そのものを、切り売りしていることになるのではありませんか」
師「その通りじゃがな」
老師は、私の目をのぞき込んだ。
師「選挙で勝つ、ということが正しいことであろう。正しいことが選挙で勝つのではない、その逆じゃ。勝ったから正しい、そういうことじゃ。正しさを決めるのは民意じゃからな。民意がそうなら、そうしたら良いのじゃ」
私「それでは、あまりにも、民主主義に希望がないではありませんか。国の未来はどうなります?」
師「ふふん、単純な話に気づいておらぬらしいな」老師はあっさりと指摘した。「老人には選挙権があるが、子供にはないではないか。まして、これから生まれる人間には、なおさら選挙権がない。選挙権がない連中のことを考える民主主義などあろうはずもないわい。もともと、制度的に、未来のことなど関係ないのじゃ」
がっくりとうなだれる私を、師匠は慰めた。
師「まあ、そう落ち込むな。それにしても、お前の国は、自分らの子供のことは考えぬくせに、外国人に選挙権をやろうと言い出したり、戦争が済んだ後に生まれた子供らに、生まれる前の戦争の反省をさせたりする。残してやるのは借金の山じゃ。そういう要求をする人物は、みな自分こそ正義で良識派だと信じていたりする。少子化というが、これで子供が増えたら、そのほうがよほど不思議じゃよ。」