Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

御社のトップがダメな理由

「御社のトップがダメな理由」藤本篤志

前作「御社の営業がダメな理由」で一大ブーム(といってもいいだろうと思う)を巻き起こした著者の最新刊。
このタイトルは、出版社の販売戦略によってつけられたものだろうと思う。内容は、いわゆる90年代から日本企業に導入されはじめた「新経営手法の幻想」に対する批判である。

著者は、いわゆる「失われた10年」の間に導入された「新しい経営手法」「改革」がいかにダメか、つまびらかに説明する。
まず「実力主義成果主義」である。それ自体の聞こえはいい。しかし「実力主義人事」の実力には「蓄積」がまったく考慮されていない、と著者は指摘する。
たとえば、20本のホームランを20年打ち続けたベテランと、40本のホームランを2年続けて打った若手のどちらが4番か?それは、若手のほうだろう。
しかし、だからといって、若手をキャプテンにするだろうか?キャプテンにふさわしいのはベテランだ、と著者は言う。「累積で見れば、若手は80本、ベテランは400本のホームランを打っているのだ」
そして、そのような「実力主義人事」が、実はしばしば、社内の派閥において不自然な昇進を生み出す温床だと警鐘を鳴らす。年功序列であれば、そう簡単に上位者を追い越せない。それは、一種のモラルハザードに対する防止策として機能していたはずだ、と述べる。

「360度評価」についても、日本では無理じゃないかとのお話。欧米人は、会議で上司に向かって平気で「あなたは間違ってます」とやる。しかし、会議が終われば、週末のパーティに誘う。オンとオフの切り替えが早いし、会議と日常の業務が切り離されている。
しかし、同じことを日本でやれば「恥をかかされた」と根に持つ上司は多いだろう。
また、出来る同僚は、必ず評価のときに妬まれる。「あいつは仕事はできるが、人間的に未熟だ」とわけのわからない評価になる。

フラット型組織。
一見「スピードのある経営」だが、早い話がトップが末端まで「ああせい、こうせい」と言える間だけの組織である。
いざトップに衰えがきたら、絶対に後継者、中間管理職が育っていないことになる。「会社の寿命は30年」を裏書きするだけである。

ボトムアップ主義」
これはもう、ただの「無責任」の温床である。だいたい、社員の意見でボトムアップというが、会社は思った以上に上層部と社員では情報量に差があるものである。社員から、ホントにそんな有益な提案が出る確率は低い。
もしもうまくいったというのであれば、それは少数の例外を誇張している。ほとんどは成果が見えない施策であり、しかもその責任を誰も取らない。。。

評価は☆☆。ここまで大胆に、よくぞ書いたものだ、という感想しか出ない。これは鋭いねえ。
もっとも、難点としては、このタイトルだと本当に読まなきゃならない人は読まなくなるのじゃないか、ということだが(苦笑)。

ちなみに。
著者は経営コンサルタントだが、格差問題や雇用問題にも造詣が深く、おかしなマスコミの改革批判にも一定の距離を置いている。
そういう意味で、たとえば単純な「日本的経営の復古主義者」なんかではない。
日本のホワイトカラーの生産性の低さを繰り返し指摘し、その原因が不合理な「幻想」にあることを指摘し続けている。
本書も、実はそういう「幻想」批判の一環だろうと思う。
知的に誠実だし、同じ営業革新コンサルタントの宋○洲なんかより、よほど信頼できるなあ。宋文○は株式公開して大金持ちになったが、どうみても妾4人に子供を7人を生ませた人物が、人に偉そうに説教するのを聞くのは気持ちよくないからね。業界関係者なら、誰でも知っている。

藤本氏みたいな人が、もっと活躍できるようになると、日本経済も少しは立ち直るのじゃないか、と思う。