Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

裸の自衛隊

「裸の自衛隊」宝島社。

10年ほど前に出たルポの文庫化である。
あえて、その当時のままの内容であるそうだ。

ご存じのように、日本は憲法9条があるから「戦力」は保持できない。であるからして、日本には「軍隊」はない、ことになっている。よって「自衛隊」という。
もちろん、この「奇妙な理屈」をそのまま受容しちゃっているわけである、大多数の日本国民は(笑)。偉大なるもの、そなたの名は民衆なり。
そもそも、9条を造ったのもアメリカさんなら、自衛隊を創ったのもアメリカさん。だからして、かかる矛盾の創造主はアメリカさんであることは明白でありますが、それを「お上の言うことだから」ごもっともと受容した日本は、基本的に百姓町人というか、まあ武家じゃないわけですよ。
しかし、武家ごっこは明治以来さんざんやって、かなり痛い思いをしたから「やーめた、これからは町人でいこう」となったのが日本の戦後だと、まあ乱暴に言ってしまうわけでありますが(苦笑)。
もっとも、最近のお上は「もう面倒みきれねえから勝手にしてくれろ」と言う雰囲気もありますな。


その自衛隊の実態を、体験入隊やら元自衛隊員やらにインタビューしつつ、ルポとしてまとめたのが本書。
「世界第3位の軍事費を使う、軍国主義復活の軍靴の音が~!」という基本パターンじゃないので(笑)、それよりももっと実態的な、つまり「かなり情けない自衛隊」の姿である。
すなわち、隊舎はいまだに「ぼっとん便所」があちこちに残っているとか。
ムリに国産化ライセンス生産した兵器は高くて使えないとか。74式戦車はコストダウンのために均質鋼板のハリボテで、砲塔旋回モーターのスイッチすらなく、メンテのときに事故が起きるとか。F2攻撃機は故障つづきで、ハッキリ言ってファントム爆装はずさなきゃこんなもんはいらないとか。
NATO弾は1発10円くらいなのに、国産は100円以上するから、戦争しようにも玉のない軍隊だとか。
そもそも、入隊希望者が集まらないので、最初の教育隊のときの風景ときたらソリコミに入れ墨ばかりだとか。

まあ、実際に「とほほ」な実態が暴露されているわけだ。この本は、自衛隊内部で話題になり、よく売れたそうである(笑)

で、肝心の質問。「自衛隊は強いの?」には「日米同盟があれば強い」そうである(笑)。だめだ、こりゃ(苦笑)だって、そもそも有事に備えての戦略偵察機能もない、敵がどの方面に来るかもわからないのに、どうやって戦うの?てなわけで、いざという場合は米軍の「属軍」として戦うことになっているんだから。
こりゃあ、アメリカさんが「面倒みきれねえなあ」と思い出すのもムリはないかもね。。。

評価は☆。まあ、自衛隊の実態を知る上では、悪くないと思う。

で、本書のあとがきによると。
実は、この10年で、募集状況は様変わりしたのだそうだ。世間は長引く不況で、公務員の人気は高まっている。自衛隊も例外ではなく、大卒の受験者が増え、今や「狭き門」になっているのだとか。
ところが、そこで「過去の遺産」がのしかかる。
すなわち、募集難時代に入隊した古参隊員である。彼らは「どうせ、今さら民間に戻っても、通用しないし、苦労もしたくないし」で自衛隊にとどまる。かつてと違い、なかなか除隊しないのである。で、面倒なことは、みんな新米隊員にやらせればいいと思っている。まるで「新兵いじめ」である。よって、各地の基地で処分が出るのだそうだが、その対象がみんな「かつての募集難時代の古参隊員」なのだそうだ。
せっかく優秀な人材が入ってきても、こんな古参隊員がいるから辞めてしまう。
よって、現在の自衛隊の問題は、なんと「隊の高齢化」だそうだ。世界でも、20代が少ないという異様な軍隊となっているらしい。あ、いけね軍隊じゃないんだっけ。。。(苦笑)

本書の最終章に、橋爪大三郎氏が寄稿している。「近代国家は、軍隊を持つ。民主主義国家は、自らの暴力装置を管理するものとして、軍隊を持つ。しかし、自衛隊は軍隊ではない。。。日本は、民主国家とはいえないという結論になってしまう」
これは、別に新しい議論ではなくて、理論の帰結としてそうなるのであり、ゆえに共産党野坂参三ですら「自主憲法制定、人民軍創設」を主張していた。まあ、野坂はスパイだったので、どこまで本音かわからないけれども。

現実に、ここのところ災害出動が続く自衛隊の活動ぶりを見ていると、諸外国よりも遙かに質は高いような気がするのだが、内実は「かろうじて」なんとかこらえていることも多いということだ。玉がないから、口で「ばん。ばん」と言って訓練してるんだもん。子供のレンジャーごっこじゃんか。

とにもかくにも「継子」扱いをやめないと、自衛隊改革なんて出来ない相談なんだろうねえ。ま、「町人の軍隊」としては、こんなもんでいい、ということなんでしょうかね?
割を食うのは、いざ有事のときの最前線、という原理原則は変わらないわけですなあ。。。