Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

スカイシティの秘密

「スカイシティの秘密」ジェイ・エイモリー

夏になると、なぜかジュブナイルが読みたくなる。つまり、児童文学である。おそらく、子供の頃に、夏休みになるとジュブナイルに読みふけった、その記憶がずーっと生きているんでしょうなあ。

で「スカイシティの秘密」です。SFですね。王道。副題が「翼のない少年アズの物語」ドキドキしちゃいますね(笑)。

さて、とおい未来のお話。人類は、なぜか有翼人(天使のように背中から翼が生えていて空をとぶことができる)と地上人に分かれて住んでいます。
少年アズはスカイシティ、つまり有翼人の都市に住んでいるのですが、彼は先天的にハンディキャップがあり、翼がありません。みんなが翼のある世界では、翼がなければハンディキャップですもんね。
スカイシティでも「弱者」つまり小さな子供や年寄りは飛行能力がなくなってしまうので、彼らのための設備はあり、アズもそういう設備を使うことになります。(エレベータなど)
そういう「障害」に負けないで、アズ少年は生きているわけです。
その彼が、ある任務のために選び出されます。それは、物資エレベータに乗って、地上世界に下りてスパイをしてくること。
スカイシティは、地上3000メートルくらいに立てられた空中都市ですが、都市に必要な様々な資源は地上からエレベータで運び上げられます。ところが、その資源が運ばれなくなったのです。
地上には、地上人(グラウンドリンク)が住んでいます。アズは、地上人とそっくりの格好をしていますから、エレベータで地上に降り、そこで何が起こっているかを探ってくるわけです。
地上では、「ポピュリスト」なる(大衆主義)運動家が勢力を持ち、天上にエレベータで生産物を収奪されるのに反対していたのです。
地上世界では、「司祭」が権威を握っており、彼らが「死後の天上への転生」を保証するかわりに、生産物の50%を税として取り上げ、天上にエレベータで送ることになっていたのです。
アズは、地上人達に助けられながら見聞した様子を天上に戻って報告しますが、ただちに地上に戻ることを望みます。それは、彼に親切にしてくれた家族が、ポピュリストの暴動に巻き込まれているからでした。。。

うーむ、おもしろい。やはりジュブナイルは、こうでなくちゃいかん。
「ファンタジックな設定」「少年の成長物語」「淡い初恋」「世の中の矛盾に気づく」ジュブナイル四天王の要素が揃っておりますなあ。
つまり、「大人でも読んで楽しめる」上質な小説、というわけですよ。

評価は☆。夏休み用に最適の一冊。縁側で寝っ転がりながら読むと、至福ではないでしょうか。

ところで、この本、いろいろな暗喩を含んでいます。
「天上」と「地上」の区別が、かつてのキリスト教会と農奴の関係を見事に体現していますし、ポピュリスト達の主張はコミュニストそのもの、です。彼ら「革命家」が、「自分たちは何でもできる」「善悪は自分達には関係ない」と主張する、その論理もそっくりです。
天上と地上は、そのまますごい「格差社会」でもあります。
つまり、この本は、そのまま「大人の童話」でもあるんですよ。

ですから、いろんな読み方ができる。「お勉強」には向かないけれども、暑い夏ですし、こんな本も良いのではないでしょうか。ね。