Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

常識の壁をこえて

「常識の壁をこえて」ダン・ケネディ

思うところがあって、マーケティングを考え直そうと思い、世評の高いダン・ケネディ先生の著作を集中して読んでいる。
それにしても、アメリカ流のプラグマチズムというやつは、身も蓋もないところが面白いのである。

この本は、いわゆる世間で流布されている「成功」の常識、といったものを、ケネディ先生がすぱすぱと斬ってみせる、という内容である。
原題は「no rules」だそうである。「ルール無用」じゃなんのことか分からないから、邦題「常識の壁をこえて」はいいところをついているように思う。

第1章で、いきなり「ポジティブ思考のウソ」とくる。
「マイナス思考はいけない、成功するにはプラス思考だ」というのが、安直な成功哲学の通り相場だろうと思う。
しかし、ケネディ先生は、いきなり、こんな小話を準備して笑わせてくれるのだ。

----------------------------
ビルの30階から足を滑らせ、落下中の男がいる。
その男に、ビルの15階の窓から、別の男が声をかけた。
「おい、今の気分はどうだい?」
落下中の男は叫びかえした。
「今のところは、最高さ」
----------------------------

このジョークは、アメリカで成功哲学を揶揄するときの定番らしい。
「いかなる場合でも前向きに!」という話を、思い切り皮肉っているわけだ。

その後に、ケネディ先生は、ある保険販売員達の話をする。
朝礼で、販売員の男達は声を掛け合う。
「よし、今日はやれるぞ」「きっと、ラッキーがあるさ」「努力は報われる!頑張るぞ!」
そして夕方。会社の近所のバーはいっぱいになる。そこには、朝礼のときとは、まるで別人ではないかと思うくらい、しょぼくれた男達が集まっているのだ。
「今日もダメだったよ」「断られてばかりだ、誰も話なんてきいてくれやしない。。。」

そこで、ケネディ先生は言う。
ポジティブ思考ですべて解決すると思うのは、間違いだ。ムリなポジティブ思考なんて、しょせんムリだ(笑)
人間に自信を与えるのは、正しい見通しと、それを解決するための沢山の具体的な方法だけである。確信があれば、人は誰しも自然と積極的で余裕をもつことができるものだ。。。

どうだろう?
私は、単純だから、ひどく感心してしまった。理念じゃなくて、具体的な方法だけが、物事を解決する。アメリカ流のプラグマチズムの精髄みたいな話だと思ったなあ。

評価は☆☆。
本の帯には「60分で読めるが、一生あなたの役に立つ本」だとある。そこまで言うと、ちょっと言い過ぎじゃないか(笑)と思うけど、まあ気分はわかる。
もちろん、本書を読んだから、ただちに「成功」できる、なんてわけがないのである。
「努力」も「運」も必要だ。ちゃんと、そうこの本にも書いている。「運」なんて関係ない、なんてことはない。むしろ、運は重要だ。

本書に「お客様は神様ではない」という章がある。
で、これは日本のある評論家の先生の話を思い出した。
その先生は、長らく○ツダのクルマに乗っていた。そのクルマのディーラーの社長方針は「お客様は神様です」というものだった。
さて、先生は、ある日、クルマの買い換えを思い立つ。先生が欲しいのは、新しい○産のクルマだった。
ディーラーの営業マンに「クルマを、○産に買い換えたい」というと、営業マンがとんできて「長いおつき合いですし、なんとか次もマ○ダにしてください」と言う。
そこで、先生は言った。
「おい、君、お客様は神様だと、君の会社ではいつも言っているじゃないか」
「はい、その通りですが。。。」
「じゃあ、その神様の僕が、次は日○のクルマにしたい、と言っているんだよ。なんで、神様の言うことが聞けないのかい?君は、神様の言うとおり、○産のクルマを僕に売ってくれればいいじゃないか。君の会社から買わないというわけじゃないんだぜ」
営業マンは絶句してしまい、仕方なくその場で社長に携帯電話をかけた。
電話に出たディーラーの社長は、先生に電話をかわってもらうと、こう言ったそうだ。
「すいませんが、いくら神様のおっしゃることでも、これだけは聞けないんです」