Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ヴァイオレット・アイ

「ヴァイオレット・アイ」スティーブン・ウッドワース。

転職やら転居やら、身辺が激動しており、てんてこ舞いしている。(死語?)
であるので、読書もはかどらず、ブログもなかなか更新できないでいるのだ。
おまけに風邪をひくわ、胃は痛むわ、またぞろ鬱の気配までして、もう大変。
どうして私の人生は、こんなに(以下略)。。。
ま、刺激があっていいわな。ただし、傍目から見たら、である。当人は、そりゃーもう大変なんですから(泣)

というわけで、久々の一冊は「ヴァイオレット・アイ」である。
なんでも、アメリカで大ベストセラーになったそうである。そりゃあわかるというもので「目をひく道具立て」「先の予測がつかない巧みなストーリーテリング」「あっと驚く結末」の3拍子が揃っているのだ。
こんなもんを、処女作でぽんぽんとタイプライターで打っちゃう新人がぽんぽんと出てくるのだから、アメリカというのはやっぱりすごい。最近はPCだろうとは思うが。
それにひきかえ、まぁ日本の小説のつまらないことと言ったら、、、おっといけねえ。

まず、舞台立ては近未来。アメリカの裁判で、ヴァイオレット・アイと呼ばれる人たちが、証人として認められるようになる。
彼らは、いわゆる霊能力者であって、死者と交信することができるのだ。アメリカ版イタコである。そのイタコの徴が「ヴァイオレット・アイ」すなわち、瞳の色が紫なのである。
たとえば殺人事件などでは「被害者の証言」は出てこない。当たり前である。だから、どうしても事実認定があいまいにならざるを得ないことになる。
ところが、彼らは法廷で、死者を自らに憑依させ、そのときの模様を克明に語り、あまつさえ犯人を指弾さえするのだ。
陪審に与える影響は絶大なこと、言うまでもない。
ヴァイオレット・アイたちは、治安維持にとって重要であり、かつ、他人に命を狙われやすいとか、あるいは政治的に中立でないと困るとか、まあ様々な理由によって人権が極度に制限された状態で暮らしてる。簡単にいえば、一生、司法当局の保護下で暮らすことを余儀なくされるのだ。
そうして、ある日、そのヴァイオレット・アイたちは、連続殺人の餌食となる。
彼らは、実にスプラッタな姿で、次々と殺されていくのである。

この連続殺人事件の捜査にあたるのがFBI捜査官のダンで、ヴァイオレット・アイの一人であるナタリーの協力のもと、犯人を捜すのである。
ヴァイオレット・アイたちの交信能力は、実は生きている人間にもおよび、その人と手を触れあうだけで相手の心を読み取ることができる。
ナタリー自身も狙われている可能性が高いわけで、ダンは彼女を警護するために、同じ部屋で眠る。しかし、手を触れると、自分の考えを読まれてしまうので(笑)お役目上も当然なのだが、今時の中学生も呆れるプラトニックな恋愛模様が描かれるあたりも、なかなか面白い(笑)。
やがて、捜査の過程で、殺されたヴァイオレット・アイと交信したナタリーの証言により、彼らが殺された時に、彼らは何者かに憑依された状態で、まったく意識がなかったことが判明。
すると、殺人者に、誰かの死者の霊が協力しているのではないか?という疑いが生まれる。それは、ヴァイオレット・アイたちのことをよく知る、つまりはヴァイオレット・アイの死者ではないのか?
こうして、犯人捜しは、なんと過去の死者にまで及ぶことになる。。。

とにかく面白いことは認めないといけない。これは映画化したら、大ヒット間違いなしだろうと思う。
評価は☆☆。特に、マキャモンなんて好きな人には、すごくお勧め。

細部の描写がすごく光っている。物語の大きなファクターに「マントラ」がある。
ヴァイオレット・アイたちは、死者と交信できるくらいなので、強力な他人の意志に「のっとられてしまう」ことが多い。
その対策として、自分の意志を保つための呪文をもっている。それが「マントラ」護身用の呪文である。
アメリカらしく、般若心経ではなくて(苦笑)かけ算九九だったり、ABCの歌だったりする。
ヴァイオレット・アイの心の防壁を打ち砕くには、このマントラを知っていることが条件なのだ。
殺されかけるヴァイオレット・アイが、必死にマントラを唱える。そのマントラを、誰かが復唱して乗っ取ろうとする。気づいたときには、すっかり支配されており、、、というようなディテールの描写が卓越しているのだ。
これは、原作もすごいのだが、翻訳者が良いのである。
翻訳家の風間賢二氏は、スティーブン・キングの翻訳を多く手がけておられるようだ。
なるほどね、なのである。