Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ビアドのローマの女たち

「ビアドのローマの女たち」アントニー・バージェス。サンリオSF文庫、絶版。

バージェスは「時計仕掛けのオレンジ」で有名な作家。小説よりも、映画の方が有名だろうと思うが。
人間の醜さとか正義とかに対する不信を画面いっぱい叩き付けたような作品だった。あの作品がすごいのは、ちゃんとわかるように作られているからで、あれよりも人間不信な作品は世の中に数多あるのであるが、もはや作った人間にしかわからなくなっているからだ。
世界中で作った本人しか見ないような映画じゃあ、いかにテーマが深遠だろうとしょうがないわな。

で、そういう「絶妙な」バージェスだから、と思って読むと、これが、、、ううん、、、なんだこりゃ。

主人公ビアドはシナリオライターで、小説の冒頭に病気療養していた妻が死ぬ。ビアドは妻を愛していたので、もちろん悲しむ。
ところが、そこに、すごく美人の写真家がでてきて、ビアドといい雰囲気になってしまう。
で、彼女はそのままアラブへ、そしてローマへ。
彼女を追っかけてビアドも移動することになるが、そうすると次々に女難に遭ってしまう。ローマでは、元気な女性4人組に強姦されたりする。
で、その間に、不思議なことに、亡くなった妻から、ときどき電話がかかってくるのである。。。

まあ、なんというか、ビアドもしょうもない男であるが、その他の登場人物もしょうもない。で、えんえんと女難の話がつづく。
作者は、よほど結婚生活に絶望していたのかどうか。
読むのは苦はないが、読みおわってあまりの内容空虚さに呆然とする。
しょせん、男女の愛情など、そんな空虚な物だというのがバージェスの真意かもしれない。
もしもそうであるなら、そんなつまらんものに紙数を費やすべきじゃないだろうと思う。

評価は無☆。ダメでしょ、これは。

いかなる名作をものした作家でも、なかには「なんじゃ、これ?」もある、という好例なのかもしれない。
女性に強姦される男というのも、哀れと言うよりはちょっぴり羨ましかったりするし、だいたいリアリティがなさ過ぎて、さっぱり感情移入できないし。「ちょっと嬉しかった」というのなら、まんざら分からんでもない(苦笑)
一言でいえば、駄作。それだけです(笑)

創作活動というのは、そういうほうが自然かもしれませんなあ。
考えてみれば、上梓する作品がすべて傑作の連続、、、などというほうがあやしい話であるよ、本当は。