Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

戦訓はどこに

私は、今回の選挙で、いわゆる陣営の選挙参謀のお手伝いをした。
私が行ったのは、3選挙区だった。
いずれも自民党であった。

ご存じの大逆風だったが、2つの小選挙区で勝ち、残り一つを比例復活にまで持ち込むことができた。
小野田寛郎ばりにいえば「自民党は負けたが、私は負けていない」(苦笑)。
まあ、運が良かっただけ、とも思う。
それにしても、朝といわず夜といわず、土曜だろうが日曜だろうが携帯がかかってくる生活は、それなりに大変だった。
おかげで、良い経験もした。

私が今回の選挙戦で感じたのは、マスコミの分析とは全く違う「風」であった。

報道では、今回の選挙では「小泉改革の負の側面」が影響した、格差社会や医療の貧困、後期高齢者制度に関する反発だとしている。

しかしながら、私が感じたのは、むしろ逆だった。
「改革を止めた自民党」「昔の通り、利権政治に戻りつつある自民党」「官僚政治を打破できない自民党」に対する失望感が「逆風」の正体だったと思うのだ。

世論調査において、当初は「福祉」と「景気対策」のベクトルの戦い、だと思っていた。私も、すっかりマスコミのペースに巻きこまれていたのである。
この軸において、自民党は「景気対策重視」民主党は「福祉重視」の数値が現れる。
麻生総理も、そのような理解で「景気対策の継続」を訴えたのであろう。

しかしながら、それは間違いだった。
あるきっかけで、私は分析によって、民主党の支持層が「福祉」ではなくて、むしろ「官僚政治の打破」つまり「行革」の支持層であることを知った。
選挙民は、民主党子ども手当や農家の戸別所得保障などの個々の政策を、決して支持しているわけではなかった。民主党は勝ったのでなく、自民党が負けたのである。

自民党への「失望」は、つまり「改革を進めず、挫折して旧態依然の利権政治に戻ろうと」しており「税金の無駄遣いに甘い」姿勢への批判だった。
ここからは私の想像であるが、おそらく選挙民は、遠からず将来に増税が不可避であると意識下では認識しており、だからこそ改革をしなければ「納得できない」と強く感じているのだろうと思う。

民主党の支持者を、実は「改革推進派」であると仮定し、そこから戦術転換を行って、辛くも勝利に結びつけることができた。つまり、民主党の支持者を自民側に呼び戻せば、相手は1票を失い、こちらは1票を得るので、選挙戦後半になるほど「真の支持理由」を発見することが勝利に結びつくわけである。
おかげで、危ういところをなんとか制することが可能となった。

この仮説は、反自民勢力である国民新党の敗北によって裏付けられたように思える。もしも「郵政民営化が悪であって、旧来に戻すのが良い」のであれば、国民新党はもっと議席を得られたであろう。
あるいは、単に福祉制度の充実であれば、公明党はもう少し議席を確保できたかもしれない。
しかしながら、これらは全くダメであった。
選挙民は、昔に戻すことを欲していない証左である。
自民党指導部は、この違いを見誤り、マスコミのミスリードにのって「行きすぎた市場原理主義を見直す」と発言した。まったく方向違いだっただろう。
結果はご存じの通りである。

さて、真に問題なのは、今回の自民党がその大惨敗の結果、本当に反省できるかどうか、である。
自民党は、今回は多く大物議員が小選挙区で落選し、その一方で比例順位が高かったために、彼らが復活して生き残る結果となった。その多くが地方を地盤とする。

日本の大きな問題として「地方の疲弊」があがる。しかし、地方救済を訴えたところで、現在の財政状況では、公共事業を地方へ昔のように配分することはできない。
もっと言えば、少子高齢化が進む地方を救済する手は、単に再分配の政策しかないだろう。
そして、この政策は、相対的に豊かな都会から地方へ、富の再配分を行うことを意味する。
都市民の多くはサラリーマンであって、無産階級そのものであるが、共産党ですら、このサラリーマン階級に対する目配りをしていない。労働者対資本家、という視点に固執し、都市と地方の対立とか世代間対立の概念を欠いているからだ。
再配分を要求すればするほど、都市は結果として富をはき出すことになるのは自明である。
選挙は、世代別や階層別でなく、地域別に行われるので、その視点を持たない理論は実用できない。

小泉選挙は、基本的に、東京と地方の県庁所在地を重視した「都市部向け選挙」で旋風を起こした。選挙の天才小沢氏は、ここからしっかり敗戦の教訓を得た。
結果、民主党は、都市部を中心に大勝した。前回の郵政選挙と逆になったが、票が動くメカニズムは同じであったと思う。

しかし、自民党は、比例で救われた高齢議員を中心に、再び地方中心、公共事業中心の越山会型の政党に戻ろうとするのではないか。
敗戦から得られる教訓は貴重であるが、間違った総括をすれば、もう未来永劫、政権を取り戻すことはあるまい。
その経世会出身の小沢一郎氏は、すでに戦訓を得て、変革を遂げたのであるが。