Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

パンとサーカス

どうやら、新聞の世論調査などを見ると、民主党は歴史的大勝利を収めるようである。自民党は壊滅状態。
あの郵政選挙の真逆で、まさに栄枯盛衰は夢のようである、、、などと感慨に浸っていたら、師匠がひょっこりとやってきた。

私「師匠様。まずは茶など」
師「うむ。ところで、お前の玄関の桃の木、ありゃ裸になっておる。大きなイモムシがいたの」
私「え?!イモムシ!しまった、、、おのれ」
私は、花桃の木についた大きな緑色の芋虫をつまみ上げた。
私「ええい、抵抗などしおって。小憎らしき奴腹」
師「もうだいぶ食われてしまったの。この花桃は幼木じゃから、これは危ないかもしれんの」
私は腹立ち紛れに、その一本角が特徴的なイモムシをふんづけようとしたものの、こやつも命と思ってやめた。
すると師匠が
師「本来は、そのモモスズメ、捕殺せねばならんのじゃが。。。」
私「は、モモスズメ、ですか」
師「さよう。スズメ蛾の幼虫じゃ。桃の葉を好むので、モモスズメじゃ。その一本角を見間違えるはずもないわい」
私「ただ、これも殺すのは、気が引けますなあ」
師「まあな。命は命じゃもの。されど、そのへんに放っておくと、桃の葉の香りに惹かれ、またやってくる。その桃の木は、今度こそ終わりじゃ」
私「うむう。。。」
師「桃の木で生計をたてている農家にとっては、捕殺するしかあるまい。蛾の幼虫と自分の生計は比べられぬ。お前は農家ではない故、情けもかけられるのじゃ。しかし、お前が八百屋で買ってくる桃は、そうして虫を殺しておかねば食えぬのじゃぞ」
私「たしかに。違いありません」
師「目の前の命を惜しむことで、己が善行したなどと思うなかれ。むしろ、桃の惜しさに虫を殺すほうが、よほど正直の徳はあるかもしれぬ」
私「お話はわかりました」
といったものの、私はやっぱりそいつを踏んづけられなかった。師は「ふん」と鼻を鳴らしたが、それっきりであった。
私「ええと、ところで。民主党は歴史的大勝利、自民党は壊滅的敗北の形勢。たいへんな有様です」
師「そして、それを皆、楽しんでおるのじゃろ?劇場型、という批判を思い出すが、今、メディアでそういう知識人がとやら、一人も見かけぬのはいぶかしいわな(苦笑)」
私「これも劇場型選挙、ですよね」
師「ま、そうともいえるが。ただ、ワシは、選挙を皆が消費しておるのだろう、と思うておる」
私「消費、ですか」
師「そうよ。新しい参加型エンターテイメントじゃ(笑)何しろ安い。公営じゃもん(笑)そして、主権者の満足感を得つつ、しっかり楽しめる。これぞ消費そのものじゃ」
私「それは、悪いことでしょうか」
師「無関心よりはマシかもしれんわな。しかし、な。これこそ、小泉政治の最大の負の遺産かもしれぬわのう」
私「問題があるでしょうか」
師「本来は、悩むわけじゃ。つまり、収入は40万円しかない。でも、医療も欲しい、年金も欲しい、介護も欲しい。教育やら地域振興やら。で、あれをとって、こっちはガマンしよう、いや、こっちをとってアレはガマンだ、となるのじゃ。つまり、政策とは、どれをとって、どれをガマンするかという苦悩である。本質的に苦渋の選択じゃから」
私「はああ。なるほど。確かに、財源が無限であれば、政策論争は意味がないかもしれませんね」
老「今回の選挙はどうであろうか。ガマンの話をしているかね?ま、アホみたいな金利でも預金してしまう国民が多数なんじゃから、外国人が相手にしない程度の金利でも国債は消化できる。足りなきゃ子孫に借金じゃから、ガマンの話なんぞしないわな」
私「。。。どっちかと言うと、ご馳走ならべ大会です」
老「まあ、近いわな。ということは、ガマンがないのじゃから、選択の苦悩もない。しょせん人ごと、楽しければ良いのじゃろ」
私「それで、消費、というわけですね」
老「まあ、この選挙が終わったあとに、あれはなんだったのか、とまた言い出すのさ。そんなものじゃ。お前も楽しんできたらいいさ」
そう老師はおっしゃって、さいごに一言付け加えた。
老「なんなら、テレビに向かって、もっとパンとサーカスを!と叫んでみたらどうだね(苦笑)」