Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

給与明細は謎だらけ

「給与明細は謎だらけ」三木義一。

サラリーマンの給与は銀行振り込みになっている。昔のように、給料袋をぽんと持って帰り、奥さんが「あなた、お疲れ様でした」などという話はないのである。
その給与明細であるが、支給額からなんちゃらかんちゃらひかれて、手取りがいくら。
本書は、その「なんちゃらかんちゃら」を、懇切丁寧に解説した本である。
税率の仕組みや速算法が具体的に示されている。
もっとも、さすがに保険料だけは、それぞれの状況が異なるから例外。それだけ、日本の保険料の制度は複雑怪奇だということである。

本書の中では、税金を天引きされるサラリーマンのことを羊にたとえている。おとなしく毛をむしられる、という意味である。
あまり良い印象をもつ人は少ないだろうけど、そもそも税の使い道に関心を持つことが政治意識のはじまりなんだから、それは仕方がない。
そういえば、昔、サラリーマンを「社畜」よばわりした評論家がいたが、今では派遣社員を正社員にしろと言っているらしい。ご自分の発明した言葉なんだから、派遣社員社畜にしろ、と言えばいいだろう。

そのサラリーマンの税制であるが、基礎控除は、サラリーマンからおとなしく毛をむしるための道具として描かれている。
とはいえ、実は、今の基準で考えると、たとえば年収300万円として30%+18万円で計算すると、108万円が基礎控除。家族二人の扶養控除+社会保険料控除でゼロ納税になってしまうサラリーマンが3割もいるのだから、そりゃあ税に関心が向かないのも致し方ない。
もう少し実態を言えば、個人事業で収入が高い人が「法人なり」をしてしまうのは、この基礎控除を利用するのが目的の一つなんだから、これを細かく実費計算しても現実のサラリーマンにはメリットがない。
身近な税法の理解にはなるが、たとえば、会計事務所の先生みたいな現場に近い人が書いたら、内容はずいぶん異なるだろうと思う。

評価は☆☆。少なくとも類書がない、この出版企画は敬意を表したい。
サラリーマンで、そこそこの年収をもらっている人は、一読して損がないと思う。
ただし、あくまで「実践編」は別ですよ。

ところで、私自身は確定申告を行っているので、年末調整は縁がない。
名前を書いておしまいである。
もともと独身者であるから、税は最高レベル。控除もない。仕方がないかなと思っている。
ひところ「独身税」の議論があった。そうでなくても、控除がないので高い税金を払っている独身者に、なんでさらに高い税金を課すのか?屋上屋を積み重ねる議論なので、お前ら現実を知らないんだろうとけちょんけちょんにけなしたことがある。
そうしたら、今度は民主党の案で、子ども手当の財源に配偶者控除の廃止が出ている。
いわゆる108万円の壁の問題だが、本書で指摘があるように、税法上はその問題はない。ようは、会社の既定の問題である。
だから、単に「子どもなし家庭への増税」だという批判があるわけだ。
この問題の根底には、たとえば公立学校や医療扶助などの公的支援を計算に入れても、子どもあり家庭のほうが負担が大きい(逆にいえば、子どもなし家庭は、税金を払っても子どもの教育費を取り戻せず、他人の子どものためにお金を払うだけで終わる)ことがある。
子どもなし家庭は、税金で他人の家庭の子どものための分も税金を取られるわけだが、それでも子どもがないほうが、政府間取引がプラスになる。
早く言えば、それだけ、日本の政府は老人への分配に偏重しており、若い世代へ配分していないのである。
だから、増税すべきは、年金をもらっている老人世代で、かつ子どもなし世帯へというのがスジ論なのである。

仮に、配偶者控除が廃止されて、女性がもっと社会進出するようになると、どうなるか?
実は、いわゆる「所得の伸び悩み」と女性の社会進出は関係がある。それまで、男しかいなかった職場に、女性が増えれば働き手は2倍。よって、労働力の供給過多となり、給与は抑制される。
すると、夫婦共働きでないと生活できない事態になり、さらに少子化が進む。これを解消するべく社会資本を整備すると、その分の財源が必要になり、夫婦二人に増税となる。
よって、これを解消すべき、さらに二人は働くことになって、、、以下、はじめにもどる(笑)
とはいえ、今更昭和な専業主婦制度に戻したところで、それじゃあ世界とはもう戦えないだろうし。だいたい、いったん仕事のおもしろさを知った女性が、そう簡単に家庭におさまるわけもない。
このあたりは「自由恋愛」と同じですな(苦笑)

なにをやっても、結局なるようにしかならないので、結局のところ、政府などというものは、なるべく小さくひっそりとやってくれ、せめて邪魔はするなよ、などと私は思うのだけどねえ。