Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

デフレと円高の何が「悪」か

「デフレと円高の何が「悪」か」上念司。

勝間さんという女性の経済評論家がいて、デフレ退治運動をやっていることは私も知っている。
というよりも、私にとって勝間さんは自転車乗り、という印象のほうが強いのだが(苦笑)彼女は、都内の移動はほぼ自転車だからね。

で、その勝間さんの同志が筆者である。
今や、日本経済がデフレ不況の泥沼にはまっていることは明らかだ。
その原因を、筆者は明快に「日銀のマネー供給が少ないから」だと言う。
リーマンショックで、各国の通貨は下落したのに、不況の日本円だけが円高。通貨相場は相対的なものだから、つまり、各国よりも日銀は通貨供給を怠けている」と一刀両断である。
もしもそうなら、デフレ不況の退治は簡単である。「日銀が、もっとお札をどんどん印刷すりゃいい。国債をどんどん発行して、日銀にすべて引き受けさせろ」という結論になる。
そうならないのは、日銀が政策目標を数字で持たないから、つまり「インフレターゲット」を明確に定めてマイルドなインフレにしろ、という。
典型的な「リフレ派」の主張である。

リフレ派の主張は、シンプルで切れ味の鋭い議論なので、かなりの説得力がある。
ただし、私は、なんとなく、そのまま本書の内容に賛同しかねているのだけど。
つまり、デフレは「結果」なので、原因じゃない。その結果をシンプルに修正、などということが果たして可能なんだろうか?
あるいは、マイルドなインフレなんて、ホントに出来るんだろうか?と思う。
結論として、そのようになるという話なら、そりゃ大いに賛成なんだけれども。
まあ、こういう議論は、本書で言う「なんでも根本病」であって、目先の改善をしないという弊害があるのも事実だから、あまり言えないけれども。

日本をむしばむ少子高齢化と、本書では大した影響はないと片付けられているグローバル化は、やはり潜在成長率の鈍化に大きな影響があるんじゃないか、と思えるのである。
もう成長しないと思うから、投資をしないわけである。リターンが期待できないんだから。
そうすると、また経済が収縮する。で、そうすると設備が余る。「ほらやっぱり」となって、余計に設備投資が絞まる、以下繰り返し(泣)
このような状況で、もちろんお札をばかすか印刷するわけだけれども、それは預貯金を通じて海外投資に散ってしまい、結論として日本の信用で世界を救うような羽目になってしまうのじゃないか、と思うからである。
そうなれば円安になり、輸出回復バンザーイとなるわけだが、果たして、日本の通貨信任がそういう状況でもつものなのか、私にはわからない。
公債の利子が市場成長率を上回り続けることは不可能だと本書は言うのだけれども。

評価は☆。
デフレをなんとかしたいという著者の気迫は充分に伝わるし、議論の切れ味はいい。
だけど、経済学者の間でも真剣に議論されている「ハイパーインフレ」の可能性を、「ない」とあっさり言い切れるのか、私にはわからない。
普通に考えて、ゼッタイ返せないレベルに突入したら(今でもそうだという議論はあるが。。。)国債も紙切れ、そうなりゃ紙幣も紙切れで、それは市場で最初の桐一葉が落ちるタイミングで決まるのじゃないか、と思う。
よくある「日本人が日本政府にカネを貸しているのだから、借金がないのと同じ」という議論も同じで、つまりそれは「踏み倒す」と同じなので、踏み倒されて「あなた方は今まで税金がそのぶん安くて済んでいたので、損じゃなくて同じなんですよ」と説明を受けて、みんなハイと納得できるのか?みたいな疑問である。
会社が給料を払うのに従業員からカネを借りて払って、バランスシート上は「給与+債権」となると確かに得だが、それをある日会社が踏み倒して「その債権は、もともと会社の給料だったお金を貸したのだから、損はないですよ」と言われても、ただ働きしたという事実は残るもんなあ。
それで最近繰りできたら、そりゃラクだけど(苦笑)

しょせんマクロ経済とミクロ経済の区別がわからない男なんて、この程度の考えしか浮かばないのである。