Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

両さんと歩く下町

両さんと歩く下町」秋本治

あの長寿漫画「こち亀」の作者だが、扉絵には並々ならぬ情熱を注いでいるのだそうである。
なにしろ長期連載だから、扉絵のネタも尽きてくる。
そこで、作者は、下町を歩いて、その風景を写真におさめ、そこに両さんを配置するという扉絵を描き始めたのだという。
そうすると、この扉絵が好評で、なかばシリーズ化し、ながく続くことになった。
本書は、その扉絵と作者による解説が収められている。

作者の秋本氏は「若い頃は、青山や表参道、自由が丘といったおしゃれな町に憧れたが、年をとるにつれて、だんだん下町の良さが分かってきた」のだという。
うなずける話である。
もっとも、私は、亀有については、あまり良くは知らない。浅草もそうである。
神田については、本屋もレコード屋も多いし、神田明神にも湯島天神の梅祭りもよく行ったので、なじみの深い土地である。
なお、もともとの言葉の定義からして「下町」は「山の手」の対語であり、江戸の武蔵野台地の稜線の下の地帯を指すものである。
具体的には神田、浅草、本所、深川などである。
最近ブームである「谷根千」(谷中、根津、千駄木)などは、この定義からすると下町ではないのだが、しかし町の雰囲気からして「下町」に最近は含まれるようだ。
ま、ビルばかりになり、高速道路の日陰になっちゃった日本橋よりも、はるかに風情はあるからねえ。
同じような事情は、王子や赤羽にだっていえる。あのへんは下町ではないが、しかし、本書のなかに王子稲荷のイラストがあるように、最近では下町の中に含んで考えられるようである。

内容に関して、取り立てて論ずるまでもない。
見事な扉絵を楽しみ、下町風情にどっぷりつかればよいだけのことである。
評価は☆。

私も、若かりし頃は、三軒茶屋などという町に住んだことがあった。バブル時代のことである。
しかし、全然なにが良いのか、皆目わからなかったなあ。ただオートロックのマンションに、住人なのに閉め出されて文字通り閉口しただけだった。
その後に住んだ赤羽は、どこか猥雑な町の雰囲気と安い物価、うまいものを食わせる赤提灯が多く、たいへん気に入った。
問題は、あまりに気に入りすぎて、やや痛風気味になってしまったことだった。
その後は事情があって、今は葛飾区に住んでいる。。。あれれ、両さんの町である。
ま、安いお店がたくさんあり、ホッピーを飲むのに苦労しない。(そのかわり、フレンチはない)

人間、うわべよりも中身ですよ。花より団子、色気よりも食い気ですよ(笑)