Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

終結者たち

終結者たち」マイクル・コナリー

大変な時期なのだが、そのぶん、読書に逃避することはあるわけで。
久しぶりのコナリーである。

主人公のボッシュは、ロス市警をやめて私立探偵になっていたのだが、本作でめでたく復職する。
作者によると「私立探偵の身分で、次々と事件を解決していくのは不可能」とのこと。
そりゃそうだろう。警察も解決できない難事件(それも、殺人事件だ!)を次々と解決するんじゃ、明智小五郎じゃあるまいし、ただの「少年探偵団」になってしまう。
リアリティがなさ過ぎるわけですな。ロス市警に復帰、というのは、妥当な判断なんでしょうな。

そのボッシュ刑事が配属されたのは、未解決事件専門の捜査チーム。
アメリカでは、凶悪殺人は時効がないので、未解決事件は積み上げられる。その事件だが、新証拠が出てくると、再捜査されるわけである。その専従チーム、という設定である。

ボッシュが再捜査した事件は、17年前の女子高生殺人事件であり、その時に犯行に使われた拳銃に犯人の手のひらの皮膚が残っていた。
そのDNA艦艇が最新技術でなされて、ある男のDNAと一致する。これだけでは逮捕できないのだが(拳銃に残った皮膚と事件の直接のつながりがない)しかし充分に再捜査に値するニュースである。
そこで、ボッシュは、マスコミに情報をリークして、犯人をつり上げようとはかる。
ところが、そこで、復職したロス市警のアービング副本部長が横槍を入れてくる。
この事件は、もともと発生当時に、アービング副本部長が捜査していたものだった。
そして、有力容疑者が浮かんだはずだったのだが、その容疑者が人種差別主義者だったことがあり、捜査は断念されていたのだ。
当時のロスは、人種差別に対して暴動が起こっており、その中で、人種差別を原因とした女子高生殺人が公になると、治安上の大問題になるだろうという政治的判断のすえであった。

ボッシュは見事に事件を解決し、と同時に、アービング副本部長には、突如として引退という花道が用意されていた。
ボッシュは、難事件を解決するとともに、いわば「政敵」を葬ることに成功した形となったのである。

評価は☆。
もちろん、コナリーだから、面白くないわけではないのだが。
しかし、本作は、今までのシリーズと比べると、今ひとつだと思う。

原因は、もちろんボッシュのロス市警復帰にある。
ホームズが「実は生きていた」というほど強引ではないが、やはり展開としては、復帰話を中心にもってこざるを得ない。
だから、肝心の事件を追う線は、どうしても薄くなる。
いや、決して物語の構成上、「薄い」わけではないんだけれども。ピントが甘いというのか。

ただ、これはシリーズの都合上、致し方ないと言える。
逆にいえば、次作以降は、またいつものボッシュシリーズに戻ると言えるわけだ。
そういう期待は充分に出来る。

コナリーファンとしては。
これはこれで、まあ納得して、次回作を待ちましょうよ。

何をするにも、準備は必要であって。
その準備の期間は、派手ではないので、つまらなく見えてしまいがちなのである。
しかし、物事には、段階が必要なわけである。
何事も、辛抱しなけりゃならん場合もある、、、と思って、自分の人生を重ねて慰めてみたりするわけですなあ。
言い訳がましいけどねえ。。。