Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

op.ローズダスト

op.ローズダスト福井晴敏

あの「終戦のローレライ」やら「亡国のイージス」やらを書いた福井晴敏の作品。
今度は文庫で上中下巻という大作である。

舞台は東京、晴海である。
opは「オペレーション」と読む。
北○鮮の高官が日本に残した娘がいるのだが、その娘はすでに亡くなっている。
そこで、自衛隊の秘密組織が、替え玉の娘を仕立てて高官のもとに送り込もうとするのがきっかけである。
ところが、その後に日朝国交回復の機運が起こる。そこで、替え玉作戦は中止。
それどころか、そんな作戦を準備していたこと自体が漏洩すると拙いというので、秘密組織のメンバーそのものが密殺される事態になる。
間一髪、これを逃れたメンバーが、某国の支援を受けつつ、復讐をはかる。
それを、警察の公安で「ハムの脂身」とあだ名される窓際族、並河警部補と、秘密組織メンバーでありつつ、脱出に失敗した朋原三曹が協力して阻止する、という物語である。
日本のネット財閥アクトグループ自衛隊に採用されるのに失敗した、核爆弾並みの爆発力を持つ爆薬が使われ、クライマックスでお台場が崩壊するほどの爆発が起こる、という話である。

著者は、もともとアニメのシナリオ作家だったそうで、いかに映画になりそうな派手なシーンが続出する。
ハリウッド映画にしたら、ピッタリはまるような気がする。
ついでにいえば、内容も、なんとなく聞いたことがあるようなセリフが続いて、ある意味で期待を裏切らない。
ストーリーは、読者の期待通りに進む。
良くも悪くも、このドラマとしての予定調和をどう捉えるか?というあたりが、本書に対する評価の基準としてあるだろうと思う。
細部にこだわった丁寧な描写は印象に残るが、一方で、登場人物の心理描写は、ややしつこいという気がした。

評価は無☆。
福井氏の作品は、そのストーリーが非常に面白いと思っていたが、この作品については私はあまり好きではない。
自衛隊の秘密組織、という設定が嘘くさいので、はなから乗れないのだ。
ローレライ」のような終戦時の話であれば、すこで少しぶっとんでも、大して気にならないのだが。
今の政府に、北朝○に極秘作戦をしかけるような根性があるわけもないので、それもリアリティを欠く要因になっているだろう。

なんとなくの印象ではあるが、たしかに上中下の分量になる話ではある。
しかし、下巻のクライマックスは、もうどうでもよくなってしまうので、もっとコンパクトにまとめてしまい、上下巻くらいに仕上げたほうが良かったのではないかと思う。
アクションが好きな人にはお勧めだけど、ハードボイルド好きの人には勧めない。

よく考えると、現実の外交のほうが、よほど小説になりそうである。日米同盟が基地移転で揺らいだ途端に、尖閣が起こり、さらに北方領土のロシア大統領視察だ。
おまけに、今度は北の砲撃である。
小説読んでいるどころじゃなくて、ほんものの外交をなんとかしろよ、という状況では、この小説に今ひとつ興が乗らなかったのも仕方がないかもしれないなあ。