Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

なぜ通販で買うのですか

「なぜ通販で買うのですか」斎藤駿。

著者は、あの有名な左翼生活いけね通販生活の代表にして創業者である。
信販売という業態が、いかに「あやしい商品」から脱出して成長してきたか、その軌跡を著者自身の経験をもとに語った本である。
そういう意味では、まさに日本の「通販業界」の生き証人の話なので、面白くないわけがない。

信販売自体は、おどろくなかれ明治に既にスタートしたものだそうである。
西欧の、ちょっとしたアイディアグッズ的なものの販売が主であった。
当時「郵便販売」という呼称もあったようだが、販売する者の主体が「郵便」ではなくて、「通信」だということで、そういう名前になったのだそうである。
志のある命名だったというわけである。

にもかかわらず、通信販売といえば、ちょっといかがわしい、あやしい商材ばかりという時代が長く続いた。
その原因は、販売コストである。
ダイレクトメールでカタログを送る、その反応で商品を売るわけで、そのダイレクトメール代金を回収してはじめて成り立つ商売である。
すると、普通の安い商品を販売しても、そのコストが回収できないのである。
なるべく原価の安く、売価の大きな、悪く言えば詐欺まがい商材しかルートに乗らなかったのであった。

著者は、まさにそういう商材でヒトヤマ当てる。「超音波美顔器」である。新聞広告で、羽が生えたように売れて大もうけ。
ところが、ある日、消費者雑誌に「超音波はほとんど出ていない、問題商品」だと告発される。
そこから、著者の「転向」が始まる、というわけである。

郵券代が高いと商売にならないから、節約のために雑誌にして、第三種郵便をとる。
そうすると、カタログだけでは雑誌にならないから、記事をのせる。
その記事を読んだ人が、商品を買うという「通販生活」のできあがり、である。

デロンギオイルヒーターの項で「使用価値は、お客だけでなく売り手が作っても良い」とあって、これは大きく頷いた。
まさに、提案セールスそのもの、である。

評価は☆。おもしろさはまずまず、かな。

私は、一時、通販生活を読んでいたけど、辞めてしまった。
理由は2つあって
1,左翼生活ぶりが肌に合わなかった。私は、基本的には憲法改正派(消極的改正不要派)である。少なくとも、九条についての信仰はなくて、道具の一つとして使い勝手を考える。
2,推薦商材の選択に、一部が疑問。
例をあげると、デロンギオイルヒーターが、日本の冬に合っているとあまり思わなくて、もしも同じコンセプトの商材であれば、独創的草分け商品として「サンラメラ」のほうが、穏やかな暖房能力、安全性、省エネ性のすべてで優っていると思う。
しかし、長年にわたりデロンギを推してきて、今更他社に商権を変えられるわけもない。
すると、単に「大勢の小売業者の一つ」以上の存在とは思えないので、読者である必要も感じなくなった。

さらに、本書では振られてないが、ネットとの関係について思うこと。

インターネットの時代になって、郵券代の問題は解消されてきて、使用体験はアフィリエイトの形で反映されるようになってきた。
初期の明治の通販と同じく、受注後仕入れも「ドロップシッピング」で実現。
あとは、インターネット上で
「みんなで作る通販生活」の時代が来るのを待つばかりだろう。
売り手と買い手の垣根が溶け出すのが、次代の必然で、通販生活の役目が終わるのだろうと思う。

最後に余計なことを一ついえば、私には、この曲者の著者が、本当に最初から護憲主義者だったとは思えないのだよ。
ただ、超音波美顔器を売って、消費者団体に袋だたきにされたときに、思いついたのではないか。
だって、消費者団体は、左翼には優しいんだからね。
ほうれん草の放射能以上に毒性のあったCOOP製冷凍ほうれん草(支那産)に対する消費者団体の優しさを考えたら!
私だって、消費財をやるなら「左翼」を名乗ることにするだろう。
憲法九条」という呪文は、そういう風に「使う」ものだと、私は思っているのである(笑)