Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

マネー力

マネー力。大前健一。

だいたい評論家というのはいい加減な人種と決まっている。
大前氏は、鋭い舌鋒と緻密な論理で読ませる本を書いていたが、最近は粗製濫造ぎみなのか。
やっぱり「評論家」になっちまったなあ、というのが正直な感想である。

まず、日本人の投資は幼稚園児ではないか、と指弾する。
ただ同然の金利の自国通貨で円を保有するしか能がない。
世界で、こんな民族は居ません、とばっさり。
で、その不思議の説明を、バブル崩壊でみんな痛い目に遭いすぎたからだと分析する。
元本が安全であることが一番大事、あとの運用はどうでもいい、というような投資姿勢だと述べる。
それは、かつては正攻法だった。なぜなら、日本全体が経済成長を続けており、住宅ローンを返済して退職金をもらうだけで、都市部であれば資産1億にすぐ届いたからである。
しかし、いまや時代は変わった。
日本の経済はもう成長期を脱してしまったし、財政は悪化する一方で、政治家は人気取りの国債発行しか考えない、だからついには国債が償還できなくなる、その日が円の終わりであるという。
だから、資産は分散投資しよう、と呼びかける。
特に有望な先としてBRICSをあげている。

後半は、しっかり自分のビジネスブレイクスルー大学のマネー講座を宣伝。通販である「私は○○でがんが治った」と同じ手口である(笑)
いわば、私はこれでマネー音痴がなおりました、みたいなノリである。

評価は無☆。
まあ、別に読まなくてもいいや。

マネーについていえば、大前氏が指弾した通りであろう。
けれども、この低成長時代で、マネー運用どころか、まず自分の労働力をちゃんと市場で換金することのほうが難しいのである。
大前氏が本書の中で言うように、支那やインドやシンガポールの労働者がもっと安くやってみせることを、日本人がやっても給料が高いからダメである。
すると、長期的に、日本人の給与を下げるしか方法がない。たぶんそれがデフレの本質だろう。

ただ、私は、支那やインドと同じ方向で競争すること自体、まったくムリな戦略だろうと思う。
あれらの国は人口が多くて、競争が激しい。その中で、人は仕事を得るわけで、同じ仕事のレベルでいけば、やっぱり彼らのほうが優秀な人材が得られるように思うのである。
では、どうするか?

一つあるのは、オープン作戦である。
優秀な人材は、おだてて木に登らせるに限るのである。
シンガポール支那やインドの優秀な人材は、英語がペラペラで国際社会で通用する。
すると、つまらん仕事をこつこつやるのはばからしいので、有る程度の仕事を覚えたら世界をまたにかけてとっとと独立するに相違ない。いや、実際にそういうビジネスマンは多い。
かくて、工場には、元通りの二流以下人材が残る。
一方の日本は、何年かけてもろくにしゃべれない英語教育のおかげで、まったく国際社会で通用しない。
だから、工場には、地アタマはそこそこなのに、独立できない人材が残る。しめしめ、これでようやく競争優位である(苦笑)
いや、なんとなく、日本の古来の基本戦略はそんな感じがするのだ。
市場で言えば、残存市場で利益を出すという感じだ。

この作戦の問題点は、のこりもの市場でも、それなりに美味しい部分が残っていることが前提だということである。
その部分が縮小していくと、これはきびしい。
ただねえ、、、日本でアップルやグーグルみたいな、次世代を担うニュービジネスが出てくる気がしないんだよね。
二番手戦略も、なかなかこれらの新市場では使えないし。
いっそ、3番手、いや、最後尾戦略なんてどうだろうか?今や世界で人気の職人の技なんて、その最たるものだとおもうのだけれどもなあ。