Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

今ふたたびの海

「今ふたたびの海」ロバート・ゴダード

ゴダードは、典型的なストーリーテラーとして知られる作家である。
本書も、その例に漏れない作品。

舞台は18世紀のイギリスで、南海泡沫事件が背景である。南海泡沫事件というのは、東インド会社の大もうけの2番煎じを狙って設立された会社で、財政赤字に苦しむ英国政府は国債を南海会社に引き受けさせ、その国債を南海会社がすべて株券に変えてしまうという大インチキをやった事件のことである。
実態は南海会社は大赤字で、財政赤字を解消したい政府と会社の粉飾を狙った経営陣(経理担当のナイト)が結託し、実際には政治家や貴族にわずかの資金と引き替えに、大量の株を渡した。
日本でいえば、例のリクルート未公開株事件と同じケースである。
これで、高名な政治家がたくさん株主になっているということになり、株価は高騰したのだが、やがてメッキが剥げて大暴落。
そのとき、裏で株を渡した人物のノートが流れたというのが本書の発端であり、これをグリーンノートという。

主人公のスパンドレルは、地図業者であったがバブル崩壊の不景気から負債が滞り、投獄されていた人物である。
ある日突然呼び出され、ある文書をオランダのド・フリースという人物に届けるだけで、負債を帳消しにしてやろうという。
うまい話でスパンドレルはとびつく。
無事にスパンドレルは文書(グリーンノート)を届けるが、その相手のド・フリースがなんと、その晩に何者かに殺される。
スパンドレルは犯人の疑いを受けて死刑を待つ身となったが、逃亡する。
犯人は、ド・フリースの未亡人が、召使いと謀っておこしたものであった。

ド・フリース未亡人がグリーンブックを持ち去ったのは、国王僭称者に売却するためであった。
グリーンブックが公表されると、大きな政治的混乱が起こるので、これを阻止しようとする勢力と未亡人、それにスパンドレルが二転三転しながら追跡劇を繰り広げる。。。

評価は☆。
かなり面白いお話であることは、間違いない。
ただ、瑕瑾は、後半にご都合主義が目立ちすぎるのだ。死んだはずの人物が実は生きていて、大立ち回りなど、ありそうもない展開が出てくる。
まあ、そうしないと結末が付けられないからだが、タチの悪い漫画なみである(苦笑)

それにしても、日本のバブル崩壊もひどい現象であったが、問題はそれ以後である。
失われた10年が過ぎて、20年になってしまった。
その間、日本人の平均年収はどんどん下がって、特に若い人はひどい。
安月給だから、生活防衛のためなのだが、なんと35歳で35%の人が親と同居している。結婚年齢も上がるわけである。
一方の高齢者も、実は資産下落でひどい状況になっている。これは、ひどい低金利と、これにリンクする地価の下落の問題である。
さらに、年金問題もあって、みんなお金を使わない。
人口が減って、お金を使わない人が増えて、収入が増えずに資産が下落する。これが20年。
衰退する老国家と考えると、もはや景気回復はないだろう。

個人レベルで考えると、とにかく組織に頼らないで、自ら付加価値を稼げる能力をつけておくことでしょうなあ。
幸い、ネットやモバイルの普及で、個人レベルのビジネスは安くできるようになってきた。
個人が生き延びることを真剣に考える時代なんでしょうなあ。